表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘く誘う冬の悪魔  作者: まっちゃ
第二週 濁る吐息に溶ける華
8/32

2/8 蝋に灯る哀

こんにちは、まっちゃです。1日1話企画、ついに2週目。28日まで、頑張っていきます。

朝の教室は、いつもより少しだけ暖かかった。

暖房の設定が上がったのか、それとも人が多いからか。理由は分からない。ただ、吐く息が白くならないだけで、今日は楽だと思えた。

席に着いて、雪宮悠は鞄を足元に置く。

窓の外には、まだ溶けきらない雪が残っていた。日陰に押し込められた白は、時間を止められたみたいに動かない。

「おはよ」

声は、斜め後ろからだった。

「……おはよう」

振り返ると、そこにいたのは紅羽灯だった。

少し赤みのある髪が、朝の光を受けて柔らかく見える。派手というほどじゃない。でも、教室の中で自然と視線が向く人だった。

「今日、寒くない?」

そう言いながら、灯は自分の手を軽くこすっている。

その仕草が、寒さを訴えているのか、それともただの癖なのかは分からない。

「……大丈夫」

短く答えると、灯は「そっか」と笑った。

それ以上、何かを聞いてくることはない。


授業中、ストーブの音が微かに響いていた。

暖かいはずなのに、指先は少し冷たい。悠はペンを握り直し、ノートに視線を落とす。文字を追っているはずなのに、内容はあまり頭に残らなかった。


昼休み、灯は悠の机の横に立った。

「今日さ、放課後ちょっと残らない?」

誘いというより、確認に近い言い方だった。

「どうして?」

「ううん。ちょっと、話したいだけ」

その「だけ」が、どのくらいの重さなのか分からない。

でも、断る理由も思いつかなかった。

「……いいよ」

そう答えた瞬間、灯の表情が少しだけ緩んだ気がした。

ほんの一瞬で、見間違いかもしれない程度の変化。

放課後の教室は、人が減ると一気に静かになる。

夕方の光が机の角を照らし、影を長く伸ばしていた。

灯は窓際の席に腰掛け、足を軽く揺らしている。

「なんかさ、最近疲れてない?」

唐突な問いだった。

「……普通だよ」

そう答えると、灯は「そっか」と頷いた。

それ以上、踏み込んでくることはない。ただ、同じ空間にいる。それだけ。

話題は取り留めもなかった。

授業のこと、寒さのこと、昨日見たテレビの話。どれも浅く、どれもすぐに終わる。

気づけば、窓の外は薄暗くなっていた。

「あ、もうこんな時間だ」

灯がそう言って立ち上がる。

「引き止めてごめんね」

「……ううん」

謝られるほどのことでもない。

むしろ、時間が早く過ぎた気がしていた。


昇降口で靴を履き替えながら、灯がこちらを見る。

「また、話そうね」

「……うん、灯」

名前を呼んだ瞬間、自分でも少し驚いた。

でも、灯は気にした様子もなく、「うん」と笑っただけだった。

外に出ると、空気はやっぱり冷たい。

昼間の暖かさが嘘みたいに、頬がひりつく。

帰り道、足元の雪は溶けかけて、ぐずぐずと音を立てた。

白はもう白じゃなく、透明に近い色をしている。


家に着くころには、体の芯まで冷えていた。

マグカップを棚から取り出し、しばらくそれを見つめる。

今日は、何を飲もうか。

そう考えて――結局、何も作らなかった。

部屋の明かりが、静かに灯る。

それは暖かくて、でも、長くは続かない光だった。


蝋に灯る哀は、まだ形を持たない。

今更ながら、軽く登場人物の読み方を。

・主人公    雪宮 悠 (ゆきみや ゆう)

・クラスメイト 霜原 こおり (しもはら こおり)

        紅羽 灯 (くれは あかり)


です。今後とも、彼ら彼女らをよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ