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甘く誘う冬の悪魔  作者: まっちゃ
第一週 碧い日陰の溶けぬ雪
3/4

2/3 忍び寄る冬

こんにちは、まっちゃです。1日1話企画、3日目。冬休み、帰ってきて。

雪宮悠は、朝から降り続く雪の白さに、いつもより静かに包まれていた。窓の外は厚く積もった雪で世界が柔らかくぼやけ、通学の喧騒も、友人の声も、今は遠い記憶のようだ。部屋の中の空気は暖房でほんのり湿り、冬の匂いが静かに鼻をくすぐる。


スマートフォンが震え、画面に霜原こおりからの文が浮かぶ。「今日はゆっくりしてね」――一見何気ない優しさの言葉。しかしその後に続く文字は、甘い空気の奥に微かなざわめきを忍ばせる。「暇だったら私の話、聞く?」


悠は返事を打たず、視線を窓に戻す。雪は碧く、まるで教室のない世界を包み込むようだった。穏やかに見える景色の中に、小さな違和感がぽつんと浮かぶ。こおりの言葉は優しいはずなのに、悠の心にはひっそりとした影が落ちる。


昼近く、雪はさらに深く降り積もり、外の景色を霞ませる。悠は机に向かい教科書を開くが、文字は頭に入らず、手元のスマートフォンをちらりと見る。再びこおりから、「寒くない?」の一文が届く。表面的には心配のようで、胸を温める言葉。しかし悠の胸は、ほんの少しだけざわついた。


画面越しの文字は、距離感の微妙さを宿している。近すぎず、遠すぎず――そのバランスは、甘くもあり、苦くもある。まるで雪の下に小さな石が隠れていて、足元をそっと揺らすような感覚。悠は窓の外に目をやり、降り積もる雪の音に耳を澄ます。


午後、結露に光が反射し室内に小さな虹が生まれる。悠は立ち上がり、窓に顔を近づける。雪に覆われた世界は柔らかく、温もりを帯びた光を映していた。そこには誰もいないはずなのに、こおりの存在がほんの少し、空気の中に混ざっているような気がした。


雪は降り続き、悠の心にじんわりと染みていく。優しさの影に潜む、計り知れぬ距離感と、甘さの裏にちらりと見える苦味。表面だけでは測れない心の揺れが、静かに、しかし確かに一日を染め上げていた。

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