2/21 鍵のかかった心の内
――黒く淀んだ空から、矢のように雨が降り注ぐ。
雪宮悠は窓の外を眺め、空舞う紫紺を視線で追った。
「おはよう、悠くん。今日も寒いねぇ」
そうだね、と言った気がする。ただ頷いただけだったような気もする。曖昧な世界を、悠はただ歩んでいた。
――何故?
…?
――何 から?
……。
――霜 は 者?
…誰の声だろうか。悠のような気もするし、羽ばたいていた漆黒かもしれない。こおり、あるいは灯だったかもしれない。霞んでいく声を、曖昧な頭は認識できなかった。
帰路、人気のない裏道。
どうやってここについたのか、歩いていたのか、元からここにいたのか。何もかもが分からなかった。
いつも通り――いつか、そんなことを言った気がする。
暖かいココア――ああ、そうだ。帰ったらあの甘ったるいココアを淹れよう。
灰に残った――…冷え切った熱、温もりのない人肌――。
眠るあなたの――。――思い出した。いや、思い出すべきではなかった――。
黒く染まりゆく視界で、最期に見えたのは一枚の雪の結晶だった。
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20xx年2月21日 14:22 配信
O町R地区の路地裏で中学生男子の遺体発見 警察は死因を調査中
O町R地区の路地裏で21日、男子中学生の遺体が発見された。警察によると、発見時には腐敗が進んでおり、死亡時期は現時点で正確には特定できていない。
現場の状況から、警察は推定2月14日頃の死亡と見ており、一部の遺体が凍結していたことから、単純な自殺ではない可能性があると説明している。
現場周辺には焼き物の破片が散乱していたが、遺体との関連は不明。警察は引き続き詳しい状況の確認と周辺住民への聞き取りを行っている。
なお、事件の詳細や続報については、引き続き情報が入り次第、公式サイトにて発表される。
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――背筋が凍った。顔も引きつっていた、気がする。
瞬間、悟る。名前の出ない記事、だが、これは間違いなく彼だ。私が言うのだから間違いない。…間違っていて、欲しい。
涙に暈された視界で、彼との写真を見つける。
――ごめんなさい。ごめんなさ…
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ふと、見かけたニュース。…成功、同時に失敗。
「こんなはずじゃ、なかったのになぁ」
その声は夜空に吸い込まれ、しかし残り続けた。
――明日はどんな日になるかな。




