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甘く誘う冬の悪魔  作者: まっちゃ
第三週 死した未来に建つ牢
24/32

2/20 燈す炎は既に灰

雪宮悠は、教室のドアを押して入ると、空気の冷たさに小さく息をついた。

窓の外には昼の光が満ちているのに、教室の中だけは氷が張ったように静かだ。机と椅子、黒板、壁――すべてが寒々しく、距離を置かれた存在のように感じられた。


そこに立っていたのは、こおり。

口角をわずかに上げ、悠を見つめる視線には甘やかな熱が含まれていた。声は柔らかく、しかし何かを浸透させるようにゆっくりと響く。


「悠くん、今日も寒そうだね」

その声に、胸の奥が少しだけざわつく。冷たい教室の空気を掻き分けるように、こおりの存在が悠を包む。日常の静けさの上に、甘い熱がじわりと染み込む。


視界の端に、派手でなくとも視線を集める紅が見えた。

その笑顔は無邪気で、声は軽やかに空間を跳ねる。悠の視界にちらりと映るだけで、胸の奥の重みが少しだけ和らぐ。灯の存在は、凍りついた要塞に小さな隙間を作るようだった。


こおりは悠の隣に歩み寄り、机の縁に手を置く。距離は近いのに、不思議と圧迫感はない。

「ねぇ、今日は一緒にここで……」

言葉の続きを想像するだけで、悠の心は甘く浸されるように熱くなる。教室の冷たさと、こおりの熱――その対比が、悠の内面をひとつの液体のように撹拌する。


一方で灯は、窓際で手を振り、笑い声を少しだけ教室に残す。

「見て見て、雪の影が面白い形だよ!」

その無邪気さは、冷たく固まった教室を砕こうとする小さな炎のようだった。悠はその光景をぼんやりと見つめながら、心の奥で微かに揺れる自分を感じる。


教室を出る頃、胸の中に小さな灰のような感覚が残る。

温かさでも冷たさでもなく、確かにそこにある何か――それは、悠の中に生まれた、新しい自分の片鱗だった。

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