表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甘く誘う冬の悪魔  作者: まっちゃ
第三週 死した未来に建つ牢
21/32

2/17 廻る命の甘味は―白昼に浮かぶ光―

在る。


空は明るい。

夜はすでに沈み、光は均され、世界は輪郭を失っている。

それでも、在るものは在る。


白が羽となって、光に溶ける。

羽ばたく必要はない。

落ちる影がある以上、そこに在ることは確かだった。


下を見下ろす。人間がいる。

止まっている。揃っている。


理由は分からない。

だが、止まる時間なのだと知っている。


赤は、見えない。

色そのものが存在しない。

それでも、人間は止まる。

だから、止まるという行為だけが正しい。


白線がある。

線というより、区切りだ。

越えてはいけない場所。

越えるときが来る場所。


影が落ちる。

自分のものだと、分かる。


黒は闇より深い。それは、比較の問題ではない。

闇が意味を持つ前から、この黒は在った。


嘴に、重さがある。

何かを咥えている。


落とした記憶はない。

拾った記憶もない。

だから、最初からそうだった。


緑が、淡く光る。

それは色ではない。

色という概念が、そこに追いついていない。


自分のものだ。

そう、思っている。


思っている、という言葉は正確ではない。

疑ったことがない。

疑う理由が存在しない。


白い羽が一瞬、光を弾く。

その反射が、人間の視界をかすめる。

だが、誰も気づかない。


気づかないことが、正しい。


音が鳴る。白い音。

それが合図だと、知っている。


人間が動く。揃って、前へ。

止まっていたものが、流れ出す。

世界が、再び循環を始める。


黄金が、光を受ける。

眩い。見つめるための色ではない。


紫紺が、沈む。底がない。

覗き込むという行為が、意味を失う。


それでも、見ている。


見下ろしている存在がいる。横断歩道を渡る、一人。


振り返らない。振り返らないことを、選んでいない。

選択という概念が、そこにはない。


それが、ひどく安定している。


――正しい。


そう判断した瞬間、判断という行為そのものが、意味を失う。


時間が進む。

進んでいるというより、同じ位置で、意味だけが回転している。


夕方。

夜。光は残っている。


再び、下を見る。

同じ場所。

同じ人間。


止まった記憶がある。

だが、信号の色は存在しない。


それでも、役目は果たされる。


影を落とす。

今度は、意識的に。


誰も気づかない。

それでいい。


自分は、鳴かない。

啼く必要がない。


在ることと、知らせることは、別だ。


家に入る人間がいる。

光が点く。

影が、遅れて動く。


遅れたのではない。

合わせなかっただけだ。


天井を見る人間。

目を閉じる人間。


その内側で、薄いものが軋む。

割れない。

まだ。


見ている。


見ている、という行為だけが、確かだ。


嘴の中。

緑が、わずかに脈打つ。


それを、自分のものだと思っている。

そう思い込んでいる。


だが――

それを「見た」ことは、一度もない。


次の瞬間、白が広がる。

白昼だ。

夜ではない。闇でもない。


それでも、星は沈んだままだ。


――今日もまた、割れることはなかった。


そうして、白昼に浮かぶ光だけが、確かに、そこに在り続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ