2/2 甘くほろ苦い
こんにちは、まっちゃです。1日1話企画、2日目。布団から出たくない季節ですね。
雪宮悠は、窓際の席で静かに外を眺めていた。細かく舞い落ちる雪は、教室の中の空気と溶け合うようで、冷たく澄んだ冬の匂いが漂ってくる。だが、悠の胸の奥は少しざわついていた。
粉雪が机の前を通り過ぎる。白く、うっすらクリームがかった髪が陽の光を受けて揺れ、淡い空色の瞳がちらりと悠を捉えた。まるで雪の結晶の一片が揺れ動くように、視線の残像が心に残る。
「…悠くん、今日は寒いね」
雪原こおり。数少ない、悠とも接してくれるクラスメイト。
悠にかかったその声は柔らかく、落ち着きがあるように感じられた。悠は思わず肩をすくめるだけで、何も答えられない。わずかに頬が熱くなるのを感じながら、視線を外す。
昼休み、廊下を歩く悠の横を、こおりがさりげなく通り過ぎる。彼女の歩幅は悠に合わせているわけではないのに、微妙に距離を調整しているように見える。その間合いに、悠は無意識に意識を奪われる。近すぎず、遠すぎず――甘くてほろ苦い。
放課後、校庭の雪景色を見つめながら悠は思った。冷たい空気に頬を刺されても、心の奥はほんのり暖かい。それは、ただ隣を通り過ぎるだけの存在なのに、何かを芽吹かせる力があるからだろうか。
帰り道、夕陽が雪に反射して校庭を薄紅色に染める。悠は立ち止まり、ふと振り返る。そこにはもう、誰もいないはずの教室の廊下が、ほんの少しだけ温もりを残している気がした。
――甘く、心地よく、でもどこか苦い。この感じは何だろう――
何気ない一日が、静かに心を揺らす。こおりの存在は、ただ“いる”だけで悠の感情を揺さぶる。
雪は静かに降り続け、甘さと苦さの入り混じった午後が、悠の心にじんわりと染みていく――。
悠は家路につく途中、ふと校門の脇に落ちていた雪片に目を留めた。手のひらで溶けるその儚さに、どこか胸の奥がざわつく。こおりのことを考えると、頭の片隅で微かに違和感を感じる。
「…なんで、こんなに気になるんだろう」
自分でも理由がはっきりしない。でも確かに、ただの友情では説明できない感覚がそこにあった。
振り返ると、夕陽に照らされて輝く雪景色の中、誰もいないはずの校庭に、ほんの一瞬、淡い青い影が揺れたような気がした――悠には、それが見えたのか、見間違いなのか、まだ分からない。




