閑話:港町の化学式魔女と野良犬とカレー~C₃H₇NOS₂(アリルプロピルジスルフィド)という毒~
「犬の十戒」より
①あのね、わたしはあなたが望むような “いい子” になりたいんだ。
だから、すこし時間はかかるけれど
わたしができるようになるまで、待っていてほしいんだ。
それでね、できたときは、いっぱい、いっぱい、ほめてほしいな。
[原文]
Give me time to understand what you want of me.
②あなたに信じてもらえたら、それだけで、わたしは幸せ。
それだけで、ずっと、がんばれる。
「マテ!」って言われたら、大好きなごはんもガマンするよ。
あなたが嫌がることもしない。
どうしてかって?
だって、あなたに信じてほしいから
[原文]
Place your trust in me. It’s crucial to my well-being.
③あなたがしてくれたこと、あなたとの思い出を
わたしはぜんぶおぼえているよ。わたしには心があるのだから。
あなたは、忘れてしまっているかもしれない。だから、ときどきでいい。
わたしにイジワルしていないかどうか、ちゃんと考えてみてね。
[原文]
Be aware that however you treat me I’ll never forget it.
④いつもと違うのには、かならず理由があるんだ。
痛かったり、苦しかったり…。
だから、あなたには、いつも見守っていてほしいんだ。
だって、わたしのことをちゃんと考えてくれるのは、あなただけだから。
[原文]
Before you scold me for being lazy, ask yourself if something might be bothering me.
⑤あなたの言葉はわからないけど
あなたの気持ちは、ちゃんと届いているよ。
声を聞いただけで、あなたが喜んでいるのも、悲しんでいるのも
ぜんぶわかるんだ。あなたの気持ち、ちゃんと伝わってるから。
だから、わたしにいっぱい話しかけてね。
[原文]
Talk to me sometimes. Even if I don’t understand your words, I do understand your voice when it’s speaking to me.
⑥わたしには、あなたがすべて。
だから、わたしは、ぜったいに、あなたを傷つけたりしないよ。
でも、知っておいてほしいんだ。
本当は、わたしはあなたよりもチカラが強いかもしれないってことを。
[原文]
Remember before you hit me, I have teeth that could hurt you, but that I choose not to bite you.
⑦わたしは、あなたよりも早く年をとって
だんだん元気がなくなってしまうかもしれない。
でも、わたしがどんなに年をとっても、ぜったいに見捨てないで。
お願いだから、わたしが「虹の橋」に行ってしまうまでは、ずっと世話をしてね。
[原文]
Take care of me when I get old.
⑧大きさも重さもおなじなのに
わたしの “いのち” は、あなたよりもずっとずっと短いんだ。
わたしにとって一番つらいのは、あなたと離れること。
ひとりぼっちにはなりたくない。
だから、どうか、お願い…
1分でも1秒でも長く、わたしと一緒にいてね。
[原文]
My life is likely to last 10 to 15 years. Any separation from you will be painful for me.
⑨あなたには楽しいことがあるし、お友だちもいるけど
わたしには、あなたしかいないんだ。
だから、あなたに怒られたり、無視されるのは、すごく悲しいし
朝から夜までお留守番したり、狭いところで待ってるのは
泣いちゃうほどつらいんだ。
[原文]
You have your work, your entertainment, and your friends. I have only you.
⑩最後の約束だよ。
お別れのときは、わたしをギュッと抱きしめて。
そして、わたしのこと、忘れないでね。
わたしは、あなたを、ぜったい、ぜったい忘れない。
だって、いつまでも、生まれかわっても
あなたのことが、大好きだから。
……………ありがとう。
[原文]
Go with me on difficult journeys. Everything is easier for me if you are there. Remember I love you …
【夏の午後、路地裏で】
八月の昼下がり。
リナ・ナツメは『ナツメ亭』の厨房で、明日の仕込みをしていた。包丁でキャベツを千切りにしながら、鼻歌を口ずさむ。
「♪〜化学式は〜嘘をつかない〜♪」
その時だった。
「いい子だねー、お腹すいてるんだよねー」
店の裏手の路地から、幼い声が聞こえてきた。
リナは手を止めて、窓から外を覗いた。
小学校中学年くらいの少年が、痩せた茶色の野良犬にしゃがみこんでいる。少年の手には、プラスチックの容器。中身は──
「あれ、カレー・・・?」
犬は警戒しながらも、食べ物のにおいに引き寄せられているのか、鼻をひくひくさせている。尻尾が小刻みに振れていた。
少年が容器の蓋を開けた。
湯気が立ち上る。
犬が顔を近づける──
「ストォォォップ!!」
リナは包丁を放り投げ(まな板に突き刺さった)、店から飛び出した。
白衣をはためかせ、エプロンの紐をなびかせながら、路地へ全力疾走。
「ちょ、ちょっと待ちなさーーーい!!」
【カレーを奪取せよ】
「わっ!?」
少年が驚いて振り返った瞬間、リナは容器を鷲掴みにした。
「危ない! 食べさせちゃダメ!!」
「え、ええ!? お、おねえさん何!?」
犬は「わん!?」と驚いて二歩ほど後退した。
リナは息を切らしながら、容器を高く掲げた。中身を確認する。
──やっぱりカレーだ。それも、玉ねぎがたっぷり溶け込んだ、昨日の残り物らしい。飴色に炒められた玉ねぎが、ルーに混ざっている。
「あのね、坊や」
リナは真剣な表情で少年を見た。
「これ、犬に食べさせたら死んじゃうわよ」
「・・・え?」
少年の顔が、みるみる青ざめていく。
「し、死んじゃう・・・って・・・」
「そう。死ぬ」
リナは容器の蓋をぴしゃりと閉めた。
「あなたの優しさは素晴らしいわ。お腹を空かせた犬に、自分のご飯をあげようとしたんでしょ? でもね──」
リナは膝をついて、少年と目線を合わせた。
「人間には栄養でも、犬には毒になるものがあるの。このカレーは、その毒の塊なのよ」
【玉ねぎの正体】
少年は今にも泣きそうな顔で、犬を見た。
「ぼく・・・知らなくて・・・この子、すごくお腹すいてるみたいで・・・」
「うん、その気持ちはわかるわ」
リナは優しく微笑んだ。
「でも今日は運が良かったのよ。まだ食べてないから。だから──ちょっと勉強しましょう。なんで犬にカレーがダメなのか」
「・・・はい」
少年は真剣な顔で頷いた。
リナは地面に木の枝を拾って、図を描き始めた。
「まず、このカレーに入ってる玉ねぎ。これが一番危険なの」
「玉ねぎ・・・?」
「そう。玉ねぎにはね──アリルプロピルジスルフィドっていう成分が入ってるの」
リナは地面に文字を書いた。
アリルプロピルジスルフィド
化学式: C₃H₇NOS₂
「えっと・・・なに、それ?」
「硫黄(S)を含んだ化合物よ。玉ねぎを切ると涙が出るでしょ? あれもこの成分のせい」
リナは枝で、簡単な分子構造を描いた。
「この成分は人間には無害なの。なぜかというと──」
【人間と犬の違い】
リナは自分の胸を指差した。
「人間の体には、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼっていう長い名前の酵素があるの」
「こうそ・・・?」
「そう。酵素っていうのは、体の中で化学反応を手伝ってくれる働き者。この酵素があるから、人間は玉ねぎを食べても平気なのよ」
リナは図を描いた。
【人間の場合】
玉ねぎの成分
↓
グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ
↓
無害化される ← だから大丈夫!
「でもね──」
リナは野良犬を見た。犬は不思議そうに首を傾げている。
「犬にはこの酵素が少ないの。だから、玉ねぎの成分を無害化できない」
「それで・・・どうなるんですか?」
リナは真剣な表情になった。
「犬の赤血球が壊されるのよ」
【赤血球の悲劇】
「せっけっきゅう・・・?」
「血液の中にある、とっても大事な細胞よ」
リナは丸い石ころを拾って、少年に見せた。
「これが赤血球だと思って。赤血球の仕事はね、全身に酸素(O₂)を運ぶこと」
リナは石を動かして、配達のジェスチャーをした。
「肺で酸素を受け取って──心臓、肝臓、筋肉、脳・・・全部に届けるの。この赤血球がないと、体は生きていけない」
「うん・・・」
「赤血球の中には、ヘモグロビンっていうタンパク質が入ってる。その中心に鉄イオン(Fe²⁺)があって、これが酸素をくっつけるの」
リナは図を描いた。
ヘモグロビン
[鉄イオン Fe²⁺] ← ここに酸素(O₂)がくっつく
↓
全身に酸素を運ぶ
「玉ねぎの成分が入ると──この鉄イオンが酸化されるの。Fe²⁺が Fe³⁺ に変わっちゃう」
「さんか・・・?」
「そう。鉄が錆びるのと同じ。錆びた鉄は、もう使えないでしょ?」
少年は頷いた。
「赤血球も同じ。錆びたら、酸素を運べなくなるの」
【ハインツ小体という怪物】
「でもね、もっと怖いことがあるの」
リナは声を落とした。
「玉ねぎの成分は、赤血球の中にハインツ小体っていう変なものを作るの」
「はいんつしょうたい・・・?」
「そう。これができると──」
リナは石ころをぎゅっと握りしめて、それからぱっと開いた。
「赤血球の膜が弱くなって、ぽんって破裂しちゃうのよ」
「は、破裂!?」
「そう。これを溶血っていうの。血が溶けて壊れる」
リナは地面に図を描いた。
玉ねぎの成分
↓
赤血球の中に侵入
↓
ヘモグロビンを酸化 + ハインツ小体を形成
↓
赤血球の膜が破れる
↓
溶血性貧血
「これが起こると、どうなるか──」
リナは指を折りながら数えた。
「元気がなくなる。ぐったりする。吐く。下痢をする。おしっこが赤くなる」
「おしっこが赤く・・・!?」
「壊れた赤血球が、おしっこに混ざるからよ。そして最悪の場合──」
リナは目を伏せた。
「死んじゃうの」
【どのくらいが危険?】
少年の目に、涙が浮かんだ。
「ぼく・・・そんなこと知らなくて・・・」
「大丈夫よ、まだ食べてないから」
リナは少年の肩に手を置いた。
「でも、覚えておいて。犬にとって玉ねぎは毒なの」
「どのくらい食べたら・・・ダメなんですか?」
「いい質問ね」
リナは野良犬を観察した。痩せているが、中型犬くらいだろうか。
「犬の体重1kgあたり、玉ねぎ15〜20gで中毒症状が出るの。この子、たぶん10kgくらいだから──」
リナは計算した。
「150〜200gの玉ねぎで危険ね。このカレー一人前には、玉ねぎが大体100〜150g溶け込んでる。だから──」
リナは容器を見せた。
「これを全部食べたら、確実にアウトよ」
【カレー自体の問題】
少年は震える声で聞いた。
「じゃ、じゃあ、玉ねぎだけ取り除けば・・・?」
「甘いわね!」
リナはびしっと指を立てた。
「そもそもカレー自体が犬にダメなのよ!」
「ええっ!?」
「まず香辛料。カレーには何が入ってる?」
「えっと・・・トウガラシとか・・・?」
「そう! トウガラシに含まれるカプサイシン──化学式C₁₈H₂₇NO₃」
リナは地面に化学式を書いた。
「これは犬の胃腸を激しく刺激するの。人間は辛いもの食べても平気だけど、犬の消化器官はもっとデリケート」
カプサイシン(C₁₈H₂₇NO₃)
↓
犬の胃粘膜を刺激
↓
・激しい胃痛
・嘔吐
・下痢
・胃炎
「さらにナツメグ。これがカレーに入ってることがあるんだけど──」
リナは真剣な表情になった。
「ナツメグに含まれるミリスチシン(C₁₁H₁₄O₃)は、犬にとって神経毒なの」
【神経毒の恐怖】
「しんけいどく・・・?」
「そう。犬の神経系を攻撃する毒よ」
リナは図を描いた。
ミリスチシン(C₁₁H₁₄O₃)
↓
犬の中枢神経に作用
↓
・めまい
・運動失調
・震え
・けいれん
・幻覚
・最悪の場合、死亡
「た、たったそれだけで・・・?」
「少量でも危険なの。ナツメグ1個(約10g)で、中型犬なら致死量になり得る」
少年は完全に青ざめた。
「他にも──クミン、コリアンダー、ターメリック(ウコン)、ガラムマサラ・・・」
リナは指を折りながら数えた。
「これ全部、犬の肝臓や腎臓に負担をかけるの」
「かんぞう・・・?」
「体の中で毒を分解してくれる臓器よ。でも犬の肝臓は、こういう複雑な化合物を処理するのが苦手なの」
【ニンニクという追加の毒】
「そして──」
リナは容器の蓋を少し開けて、においを嗅いだ。
「このカレー、ニンニクも入ってるわね」
「ニンニクも・・・ダメなんですか?」
「ニンニクは玉ねぎよりもっと危険なの」
リナは強調した。
「ニンニクも玉ねぎと同じネギ属の植物。同じようにチオ硫酸化合物が含まれてて、赤血球を破壊する」
「じゃあ、玉ねぎと同じ・・・?」
「いいえ。玉ねぎより毒性が5倍強いのよ」
少年は息を呑んだ。
「つまり、このカレーには──」
リナは指を立てた。
「玉ねぎで赤血球破壊、ニンニクでさらに赤血球破壊、トウガラシで胃腸ダメージ、ナツメグで神経毒、その他香辛料で肝臓ダメージ──」
リナは容器を高く掲げた。
「犬にとっては毒の詰め合わせセットよ!!」
【塩分と油分の追撃】
「ま、まだあるんですか・・・?」
少年は震えながら聞いた。
「当然よ。塩分と油分の問題もある」
リナは厳しい表情で続けた。
「犬が一日に必要な塩分は、体重10kgで約0.5g。でも人間用のカレー一人前には──2〜3gの塩が入ってるの」
「6倍も・・・」
「犬が塩分を取りすぎると、高ナトリウム血症になるのよ」
リナは化学式を書いた。
過剰なナトリウムイオン(Na⁺)
↓
血液中のNa⁺濃度が上昇
↓
細胞外液の浸透圧が異常に
↓
・脱水症状
・腎臓への過負荷
・心臓への負担
・けいれん
・最悪の場合、ナトリウム中毒で死亡
「それに油分」
リナはカレーの表面を指差した。
「カレーのルウには、バターや植物油がたっぷり。犬は人間ほど脂質を消化できないから──膵炎を起こすの」
「すいえん・・・?」
「膵臓っていう、消化酵素を作る臓器が炎症を起こす病気。激痛を伴って、命に関わるのよ」
【少年の涙】
少年はとうとう、ぽろぽろと涙を流した。
「ぼく・・・何も知らなくて・・・こんなに怖いものだって・・・」
「泣かないで」
リナは優しく少年の頭を撫でた。
「知らなかったのは仕方ないわ。大人だって知らない人、たくさんいるもの」
「でも・・・!」
「でも、今日知れて良かったじゃない。この子はまだ元気よ」
リナは野良犬を見た。犬は二人のやり取りを不思議そうに見ている。
「あなたの優しさは本物。ただ、その優しさを正しく使う知識が必要だったの」
「ちしき・・・」
「そう。知識よ。化学の知識」
リナはにっこり笑った。
「じゃあ、これから教えてあげる。犬に何を食べさせたらいいか──そして、何を食べさせちゃいけないか」
少年は涙を拭いて、真剣な顔で頷いた。
「お願いします!」
【代わりの食事】
「ちょっと待ってて」
リナは店の中に駆け込み、すぐに戻ってきた。
手には小さなタッパー。
「はい。鶏むね肉の茹で肉と白米」
タッパーの中には、細かくほぐした茹で鶏と、真っ白なご飯が入っていた。湯気が立っている。
「これなら安全よ」
「え、味付けは・・・?」
「何もしてないわ。塩もなし。犬には、素材の味だけで十分なの」
リナは説明を始めた。
「鶏むね肉は高タンパク質。犬に必要な必須アミノ酸が全部揃ってるの」
鶏むね肉の主要アミノ酸:
・ロイシン(C₆H₁₃NO₂)
・イソロイシン(C₆H₁₃NO₂)
・バリン(C₅H₁₁NO₂)
・トリプトファン(C₁₁H₁₂N₂O₂)
・リジン(C₆H₁₄N₂O₂)
など
「特にトリプトファン(C₁₁H₁₂N₂O₂)は、犬の脳内でセロトニンを作る材料になるの」
「せろとにん・・・?」
「幸せホルモンって呼ばれるものよ。精神を安定させて、食欲を調整して、睡眠の質を良くする」
リナは図を描いた。
トリプトファン(C₁₁H₁₂N₂O₂)
↓
脳内で変換
↓
セロトニン(C₁₀H₁₂N₂O)
↓
・精神安定
・ストレス軽減
・幸福感
「白米は消化しやすい炭水化物。グルコース(C₆H₁₂O₆)としてエネルギーになるわ」
【野良犬の食事タイム】
「じゃあ、あげてみて」
リナは少年にタッパーを渡した。
少年は緊張した手つきで、タッパーを地面に置いた。
「おいで・・・」
野良犬は恐る恐る近づいて、においを嗅ぐ。
そして──
がつがつがつがつ!!
あっという間に完食した。
「うわあ・・・すごい・・・」
「お腹空いてたのね」
リナは犬をしゃがんで観察した。被毛を触る。耳の後ろを見る。歯を確認する。鼻を見る。
「・・・やっぱり」
「何か・・・わかるんですか?」
「この子、栄養失調よ」
【栄養失調の診断】
「えっ・・・!」
「まず被毛がパサパサで艶がない。これは必須脂肪酸不足の兆候」
リナは犬の毛を指でこすった。
「特にオメガ-3脂肪酸(α-リノレン酸、C₁₈H₃₀O₂)とオメガ-6脂肪酸(リノール酸、C₁₈H₃₂O₂)が足りてない」
「ひっすしぼうさん・・・?」
「体の中で作れない脂肪酸のこと。食べ物から摂取するしかないの」
リナは続けた。
「鼻も乾いてる。健康な犬の鼻は、いつも少し湿ってるはずなのよ。これは脱水と、ビタミンA(レチノール、C₂₀H₃₀O)不足」
「それから──口を開けて」
リナは犬の口を優しく開けた。
「歯石がひどいわね。これはカルシウム(Ca)とリン(P)のバランスが悪いから」
理想的なCa:P比率
= 1.2:1 〜 1.4:1
バランスが崩れると:
・歯石形成
・骨の脆弱化
・腎臓結石のリスク
「あと、目ヤニも多い。ビタミンB群不足ね」
リナは立ち上がった。
「まとめると──この子に足りないのは、タンパク質、必須脂肪酸、ビタミンA、ビタミンB群、カルシウム、リン・・・ほぼ全部」
【少年の決意】
「ぼく・・・この子を助けたいです」
少年は拳を握りしめた。
「どうしたらいいですか?」
リナは微笑んだ。
「まず、この子に名前をつけなさい」
「名前・・・?」
「そう。責任を持って面倒を見るなら、名前が必要でしょ」
少年は少し考えて、犬を見た。
犬は尻尾を振って、少年を見上げている。
ケンタは少し考えたが、思いつかないようだ。
「うーん・・・」
「じゃあ、ボンドはどう?」
「ボンド?」
「そう。化学結合のボンド。あなたとこの子の絆(bond)でもあるわ」
リナはにっこり笑った。
「ボンド! いい名前です!ボンドにします!」
「じゃあボンド。これからよろしくね」
リナは犬の頭を撫でた。ボンドは嬉しそうに「わん!」と吠えた。
【犬に食べさせてはいけないもの】
「さて、ケンタ君」
「え、名前・・・!?」
「服のゼッケンに書いてあるわよ。『田中ケンタ』って」
ケンタは照れくさそうに笑った。
「じゃあケンタ君。これから毎日、ボンドをここに連れてきなさい。私が栄養バランスの取れたご飯を作ってあげる」
「ほ、本当ですか!?」
「ただし──条件がある」
リナは人差し指を立てた。
「犬に食べさせちゃいけないものを、全部覚えること」
「はい!」
ケンタは背筋を伸ばした。
「よし。じゃあ、リストアップするわよ」
リナは店からメモ帳とペンを持ってきた。
【禁止食材リスト(ネギ属)】
「まずネギ属全般」
リナは書き始めた。
「玉ねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニク、エシャロット、ラッキョウ、アサツキ──全部ダメ」
「全部・・・?」
「全部。これらには有機硫黄化合物が含まれてて、赤血球を破壊する」
ネギ属の有毒成分:
・アリルプロピルジスルフィド(C₃H₇NOS₂)
・ジアリルジスルフィド
・アリシン
全て赤血球を破壊する毒
「しかも、加熱しても毒性は消えない。だから、玉ねぎ入りのハンバーグも、ネギ入りの味噌汁も、全部アウト」
「わかりました・・・!」
ケンタは必死にメモを取った。
【禁止食材リスト(チョコレート)】
「次、チョコレート」
「え、チョコも!?」
「チョコレートにはテオブロミン(C₇H₈N₄O₂)っていう成分が入ってるの」
リナは化学式を書いた。
テオブロミン(C₇H₈N₄O₂)
↓
犬の体内で分解されにくい
↓
・心臓の異常興奮
・不整脈
・けいれん
・呼吸困難
・最悪の場合、心停止
「人間はテオブロミンを分解する酵素を持ってるけど、犬にはほとんどないの。だから体内に蓄積されて、中毒を起こす」
「チョコレート10gで、小型犬なら危険。ダークチョコやココアパウダーは、もっと危険よ」
「わかりました・・・」
【禁止食材リスト(ブドウ・レーズン)】
「ブドウとレーズン」
「ブドウも・・・?」
「これは不思議なんだけど、原因物質がまだ特定されてないの。でも確実に急性腎不全を起こすことがわかってる」
リナは真剣な顔で言った。
「腎臓が突然機能しなくなって、おしっこが出なくなる。そして死ぬ。怖いのは、少量でも危険ってこと」
「ブドウ数粒で、命を落とした犬もいる。だから絶対にダメ」
【禁止食材リスト(人工甘味料)】
「キシリトール」
「キシリトールって、ガムとかに入ってる・・・?」
「そう。人工甘味料ね。化学式はC₅H₁₂O₅」
キシリトール(C₅H₁₂O₅)
↓
犬の体内で急速にインスリン分泌
↓
血糖値が急降下(低血糖)
↓
・けいれん
・意識消失
・肝不全
・死亡
「キシリトール入りガム1粒で、小型犬は死ぬ可能性がある。それくらい危険」
ケンタの手が震えた。
【禁止食材リスト(その他)】
「他にも──」
リナは次々と挙げていった。
「アボカド──ペルシン(C₁₈H₂₈O₅)という毒素。嘔吐と下痢」
「マカダミアナッツ──原因不明だけど、運動失調や震えを引き起こす」
「生の豚肉──トキソプラズマや寄生虫の危険」
「アルコール──犬の肝臓はアルコール分解酵素がほとんどない。少量でも致死的」
「カフェイン──コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク全部ダメ。テオブロミンと同じような中毒症状」
「生卵の白身──アビジンという成分がビオチン(ビタミンB₇)を破壊する」
「牛乳──犬は乳糖を分解する酵素が少ない。下痢になる」
「香辛料全般──カレー、コショウ、唐辛子、ワサビ、からし・・・全部胃腸を刺激する」
「塩分の多い食品──ハム、ソーセージ、スナック菓子・・・全部NG」
ケンタは懸命にメモを取り続けた。
【基本原則】
「あとね、一番大事なこと」
リナは真剣な表情で言った。
「人間の食べ物は、基本的に全部NG」
「え・・・全部?」
「そう。人間用の食べ物は、犬にとって塩分、糖分、油分が多すぎるの」
リナは説明した。
「犬の味覚は人間の5分の1しかない。だから薄味で十分。人間が『美味しい』と思う味付けは、犬には刺激が強すぎるのよ」
「わかりました・・・」
「あと、骨──特に鶏の骨や魚の骨は、割れて喉や内臓に刺さる危険があるから、絶対にダメ」
【犬に良い食べ物】
「じゃあ、何を食べさせたらいいんですか・・・?」
ケンタが不安そうに聞いた。
リナは優しく微笑んだ。
「大丈夫。安全で栄養のある食べ物もたくさんあるわ」
「まずタンパク質源」
リナは指を折った。
「鶏むね肉、鶏ささみ、鶏レバー(少量)、牛肉、豚肉(よく火を通す)、白身魚、鮭──これらは全部OK」
「炭水化物」
「白米、玄米、サツマイモ、カボチャ、ジャガイモ──これも大丈夫」
「野菜」
「ニンジン、ブロッコリー、キャベツ、白菜、小松菜、チンゲン菜──基本的な野菜は大丈夫」
「果物」
「リンゴ(種と芯を除く)、バナナ、イチゴ、スイカ、メロン──少量ならOK」
【栄養バランスの基本】
「大事なのはバランスよ」
リナは図を描いた。
犬の理想的な栄養バランス:
タンパク質: 18-25%
脂質: 5-15%
炭水化物: 30-50%
食物繊維: 2-4%
ビタミン・ミネラル: 適量
「これを守れば、健康な体を維持できる」
「それから、必ず水を用意すること。新鮮な水をいつでも飲めるようにしてあげて」
「はい!」
【リナの約束】
「よし、じゃあ約束ね」
リナはケンタと握手した。
「これから毎日、ボンドをここに連れてくること。時間は夕方5時」
「はい!」
「私が栄養バランスの取れたご飯を作ってあげる。そして──」
リナはボンドを見た。
「3ヶ月後には、ピカピカの毛並みにしてみせるわ」
「本当ですか!?」
「当然よ。だって──」
リナはにやりと笑った。
「魔法じゃない、化学よ!」
【エピローグ】
その日の夕方。
リナは厨房で、明日のボンドのご飯を仕込んでいた。
「鶏むね肉100g、サツマイモ50g、ニンジン30g、ブロッコリー20g・・・」
計量しながら、栄養計算をする。
「タンパク質は体重1kgあたり2.5g・・・ボンドは10kgだから25g必要。鶏むね肉100gには約23gのタンパク質・・・ちょっと足りないわね。鮭を20g追加」
「脂質は全体の10%・・・鶏むね肉の脂質は1.5%だから・・・サーモンオイルを小さじ1追加」
ぶつぶつ呟きながら、レシピを完成させていく。
「ビタミンAはニンジンのβ-カロテン(C₄₀H₅₆)から・・・ビタミンB群は鶏肉とサツマイモから・・・ビタミンCはブロッコリーから・・・」
「カルシウムとリンは・・・鮭の骨まで茹でて、すり潰して混ぜ込めば完璧ね」
【常連客の反応】
「おい、リナ」
店の常連、漁師の源さんが呆れた顔で言った。
「お前、そんなに真剣に犬のご飯作ってんのか」
「そうよ。ボンドの栄養管理、完璧にしなきゃ」
「あのな・・・お前、人間の客より犬に力入れてないか?」
「失礼ね。人間の客にも全力よ」
リナはきっぱりと言った。
「でもね、源さん。あの少年、本気でボンドを助けたいって思ってるの。その気持ちに応えたいのよ」
「まあ、お前らしいけどよ・・・」
源さんは苦笑した。
「でも、小学生に化学式教えるのは、やりすぎじゃねえか?」
「全然やりすぎじゃないわ」
リナは真剣な顔で言った。
「知識は武器よ。正しい知識があれば、大切なものを守れる。あの子はそれを学んだの」
「・・・まあ、そうかもな」
【翌日】
次の日の夕方5時。
約束通り、ケンタとボンドがやってきた。
「リナさん! 来ました!」
「はいはい。待ってたわよ」
リナは温かいご飯をボウルに入れた。
鶏むね肉とサツマイモのスペシャルご飯──化学的に完璧な栄養バランス。
ボンドは、また勢いよく食べ始めた。
「あのね、リナさん」
ケンタが照れくさそうに言った。
「ぼく、昨日のこと、学校で話したんです」
「へえ」
「そしたら友達が、『その人、魔法使いみたいだね』って」
「魔法使い?」
リナは苦笑した。
「だって、化学式でなんでもわかるんでしょ? 魔法みたい」
「魔法じゃない、化学よ!」
リナは決め台詞を言った。
ケンタは笑った。
「でも、リナさんの化学って、魔法みたいにすごいです」
リナは、ボンドの頭を撫でながら呟いた。
「・・・まあ、化学を知ってれば、魔法なんていらないけどね」
【港町の新しい日常】
それから──
ケンタとボンドは、毎日欠かさず『ナツメ亭』を訪れた。
リナは毎日、ボンドのために栄養満点のご飯を用意した。
1週間後──ボンドの鼻が湿り始めた。
2週間後──被毛に少し艶が出てきた。
1ヶ月後──ボンドの目がキラキラと輝き始めた。
ケンタは、リナに教わった知識を友達にも教えた。
「犬に玉ねぎはダメなんだよ! 赤血球が壊れるんだ!」
「チョコレートもダメ! テオブロミンっていう毒が・・・」
港町の子どもたちの間で、「動物に優しい化学知識」が広まっていった。
【ある日の会話】
2ヶ月後のある日。
ケンタが真剣な顔で言った。
「リナさん、ぼく、将来獣医さんになりたいです」
「え?」
「だって、動物を助けたいから。化学の勉強、もっとしたいんです」
リナは目を見開いた。
それから──ゆっくりと微笑んだ。
「・・・いいわね。応援するわよ」
「ありがとうございます!」
ボンドは元気いっぱいに尻尾を振って、二人を見上げていた。
毛並みはピカピカ。目は輝いている。もう、あの痩せた野良犬の面影はない。
【化学という魔法】
夕暮れ時。
リナは厨房で、明日の仕込みをしながら呟いた。
「玉ねぎのアリルプロピルジスルフィド・・・犬には毒でも、人間には免疫力を高める効果がある」
「同じ化学物質でも、相手が違えば毒にも薬にもなる」
「これが化学の面白いところよね」
港の向こうから、夕焼けの光が差し込んでくる。
リナは窓の外を見た。
ケンタとボンドが、夕日の中を歩いている。
少年は犬に話しかけ、犬は嬉しそうに尻尾を振っている。
「・・・魔法みたい、か」
リナはくすっと笑った。
「魔法じゃないのよ、ケンタ君。これは化学。でも──」
リナは小さく呟いた。
「化学だって、誰かの命を救える。誰かを幸せにできる」
「それって・・・魔法みたいなものかもね」
夏の夕暮れ。
港町の小さな食堂から、料理の良い香りが漂っていた。
【今回登場した化学式と成分】
アリルプロピルジスルフィド(C₃H₇NOS₂): 玉ねぎの有毒成分
カプサイシン(C₁₈H₂₇NO₃): 唐辛子の辛味成分
ミリスチシン(C₁₁H₁₄O₃): ナツメグの神経毒
テオブロミン(C₇H₈N₄O₂): チョコレートの有毒成分
キシリトール(C₅H₁₂O₅): 人工甘味料、犬には猛毒
ペルシン(C₁₈H₂₈O₅): アボカドの毒素
トリプトファン(C₁₁H₁₂N₂O₂): 必須アミノ酸
セロトニン(C₁₀H₁₂N₂O): 幸せホルモン
グルコース(C₆H₁₂O₆): ブドウ糖
α-リノレン酸(C₁₈H₃₀O₂): オメガ-3脂肪酸
リノール酸(C₁₈H₃₂O₂): オメガ-6脂肪酸
レチノール(C₂₀H₃₀O): ビタミンA
β-カロテン(C₄₀H₅₆): ビタミンAの前駆体
【犬に絶対食べさせてはいけないもの一覧】
ネギ属全般(玉ねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニク、エシャロット、ラッキョウ)
チョコレート
ブドウ・レーズン
キシリトール(ガム、お菓子)
アボカド
マカダミアナッツ
生の豚肉
アルコール
カフェイン(コーヒー、お茶)
香辛料全般(カレー、コショウ、唐辛子)
塩分の多い食品(ハム、ソーセージ)
生卵の白身
牛乳(犬は乳糖不耐症)
骨(特に鶏の骨)
【犬に安全な食べ物】
タンパク質: 鶏肉、牛肉、豚肉(加熱)、白身魚、鮭
炭水化物: 白米、玄米、サツマイモ、カボチャ
野菜: ニンジン、ブロッコリー、キャベツ
果物(少量): リンゴ、バナナ、イチゴ
【参考文献・情報源】
学術論文・専門書
Small Animal Clinical Nutrition, 5th Edition
Hand, M.S., Thatcher, C.D., Remillard, R.L., Roudebush, P., & Novotny, B.J. (2010)
Mark Morris Institute
小動物の臨床栄養学の標準的教科書
"Onion and Garlic Toxicity in Dogs and Cats"
Yamato, O., et al. (2005)
Journal of Veterinary Medical Science, 67(6), 623-629
ネギ属植物による犬猫の中毒メカニズムに関する研究
"Hematologic Changes Associated with the Appearance of Eccentrocytes after Intragastric Administration of Garlic Extract to Dogs"
Yamoto, O., et al. (1999)
American Journal of Veterinary Research, 60(5), 632-635
ニンニクによる赤血球への影響
"Chocolate Poisoning in Dogs: Theobromine and Caffeine Toxicity"
Gwaltney-Brant, S.M. (2001)
Veterinary Medicine, 96(4), 310-312
チョコレート中毒のメカニズム
"Xylitol Toxicosis in Dogs"
Dunayer, E.K. & Gwaltney-Brant, S.M. (2006)
Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 36(6), 1307-1312
キシリトールによる低血糖と肝不全
"Grape and Raisin Toxicity in Dogs"
Eubig, P.A., et al. (1997)
Journal of Veterinary Internal Medicine, 11(6), 385
ブドウ・レーズンによる急性腎不全
獣医学機関・専門組織の資料
ASPCA Animal Poison Control Center
アメリカ動物虐待防止協会の中毒情報センター
https://www.aspca.org/pet-care/animal-poison-control
犬猫の中毒物質データベース
Pet Poison Helpline
24時間動物中毒ヘルプライン
https://www.petpoisonhelpline.com/
各種中毒物質の臨床データ
American Kennel Club (AKC) - Canine Health Foundation
https://www.akc.org/expert-advice/nutrition/
犬の栄養学に関する信頼できる情報源
Merck Veterinary Manual
https://www.merckvetmanual.com/
獣医学の包括的マニュアル
日本の獣医学資料
日本獣医学会誌
犬猫の栄養学と中毒学に関する日本語論文
公益社団法人 日本獣医師会
https://www.nichiju.or.jp/
「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
ペットの適切な栄養管理に関する公的ガイドライン
化学・生化学の基礎資料
Nelson, D.L. & Cox, M.M. "Lehninger Principles of Biochemistry" 7th Edition
W.H. Freeman and Company (2017)
生化学の標準的教科書(日本語版:「レーニンジャーの新生化学」)
Murray, R.K., et al. "Harper's Illustrated Biochemistry" 31st Edition
McGraw-Hill Education (2018)
代謝経路と酵素反応の詳細
栄養学・毒物学
"Small Animal Toxicology" 3rd Edition
Peterson, M.E. & Talcott, P.A. (2013)
Elsevier Saunders
小動物の毒物学包括的テキスト
"Nutrient Requirements of Dogs and Cats"
National Research Council (2006)
National Academies Press
犬猫の栄養所要量に関する科学的根拠
オンライン獣医学データベース
VIN (Veterinary Information Network)
https://www.vin.com/
獣医師向け専門データベース
PubMed / NCBI
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
医学・獣医学論文検索データベース
食品化学・栄養素データ
USDA FoodData Central
https://fdc.nal.usda.gov/
食品の栄養成分データベース
日本食品標準成分表 2020年版(八訂)
文部科学省
日本の食品成分データの公式資料
具体的な化学物質の情報源
PubChem (NIH)
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/
化学物質の構造式、物性、生物活性データベース
ChemSpider (Royal Society of Chemistry)
http://www.chemspider.com/
化学構造検索データベース
臨床症例報告
"Clinical Toxicology of Commercial Products" 5th Edition
Gosselin, R.E., et al. (1984)
Williams & Wilkins
商品の毒性に関する臨床データ
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care
緊急獣医療における中毒症例の学術誌
【注意事項】
本作品は、上記の科学的根拠に基づいたフィクションですが、実際にペットを飼育される際は、必ず獣医師の指導を受けてください。
本作品の情報は2025年時点の科学的知見に基づいていますが、獣医学は日々進歩しています。最新の情報は専門家にご確認ください。
【伏木より】
この物語で紹介した化学式や栄養学の知識は、実際の獣医学・栄養学の研究に基づいています。しかし、物語の展開や登場人物はフィクションです。
「魔法じゃない、化学よ!」──この言葉に込めたのは、科学的知識こそが、大切な命を守る最強の武器だという思いです。
正しい知識を持つことで、私たちは愛する家族(ペット含む)を守ることができます。
化学は難しいかもしれませんが、それは決して「魔法」ではなく、誰もが学べる「知識」です。
この物語が、少しでも多くの方に「科学の力」を感じていただくきっかけになれば幸いです。




