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魔法のない魔法使い ― Parallel Diner ―  作者: 伏木 亜耶


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13/14

閑話3:アルコール消毒という迷信~C₂H₅OHは体内でウイルスを殺せるのか?~

再びの閑話です。

先の物語でアルコールを扱いましたが、そのついでにといいますか、かつて個人的に某所で使った注意喚起の文書を『ナツメ亭』の物語に書き換えてみました。


「風邪が流行ってるねえ!内側からアルコール消毒でい!」

は冗談とはいえ、本当はどうなのかを検証した物語です。

物語というか、ほぼ「注意喚起文書」そのままのようなお話ですが。

【冬の夜の会話】

十二月のある寒い夜。

『ナツメ亭』は、いつもより客で賑わっていた。この季節、温かい鍋料理と熱燗を求めて、常連客が次々と訪れる。


「ゴホゴホッ・・・」

カウンター席で、漁師の源さんが咳をした。

「源さん、風邪?」

リナが心配そうに声をかける。

「いや、大丈夫だ。ちょっと喉がイガイガするだけ」

源さんは手を振った。

「そうだ、リナ。日本酒の熱燗、頼むわ」

「風邪気味なのにお酒飲むの?」

「むしろ飲んだほうがいいんだよ」

源さんはにやりと笑った。


「酒飲んで、体の中からアルコール消毒だ! これで風邪のウイルスも死ぬってもんよ」

「そうそう!」

隣の席の健太も頷いた。

「俺の親父もよく言ってる。酒は百薬の長って。インフルエンザの予防にもなるって」

「今年はコロナもまた流行ってるしな。酒飲んで免疫力上げないと」

別の客も同調した。


リナは包丁を置いて、深くため息をついた。

「・・・ちょっと待ちなさい、あんたたち」


【リナの反論】

「源さん、健太君、それから皆さん」

リナはカウンター越しに、真剣な表情で客たちを見回した。

「その話、完全に間違ってるわよ」

「はあ? 何言ってんだ。昔からそう言うだろ」

源さんが反論した。


「昔から言われてることが、全部正しいわけじゃないの」

リナは腕を組んだ。

「お酒を飲んでも、体の中のウイルスは死なないわ。それどころか──」

リナは声を落とした。


「風邪やインフルエンザの時にお酒を飲むと、症状が悪化するのよ」


「え、まじで!?」

健太が驚いた。

「当然よ。化学的に説明してあげるわ」

リナはメモ用紙とペンを取り出した。

「まず、アルコール消毒の原理から説明するわね」


【アルコール消毒のメカニズム】

リナは図を描き始めた。

「手指消毒に使うアルコールは、エタノール(C₂H₅OH)よね」

エタノール: C₂H₅OH

H H

| |

H-C-C-O-H

| |

H H


「このエタノールが、なぜウイルスや細菌を殺せるのか」

「それは──」


【アルコール消毒のメカニズム】


エタノール(濃度70〜80%)

1. タンパク質の変性

・ウイルスの外膜(エンベロープ)を破壊

・細菌の細胞膜を破壊


2. 脂質の溶解

・ウイルスの脂質二重層を溶かす


3. 脱水作用

・微生物から水分を奪う

ウイルス・細菌の不活化

「つまり、エタノールは、ウイルスや細菌の『殻』を壊すことで、それらを殺すの」

「へえ・・・」

客たちは興味深そうに聞いていた。

「でもね──」

リナは重要なポイントを指摘した。

「これは、体の外での話なのよ」


【体内では何が起こるのか】

「お酒を飲むと、エタノールは消化管から吸収されて、血液に入るわ」

リナは新しい図を描いた。


【アルコール摂取後の流れ】


口 → 食道 → 胃(20%吸収) → 小腸(80%吸収)

血液に吸収

全身に運ばれる

肝臓で代謝


「血液中のアルコール濃度は、日本酒1合(純アルコール約22g)を飲んだ場合──」

リナは計算した。


「体重60kgの人で、血中アルコール濃度は約0.03〜0.05%になるの」

「0.05%・・・?」

「そう。これはパーセントで表すと、0.05%。つまり、血液1Lあたり0.5mlのエタノールよ」

「一方、手指消毒に使うアルコールの濃度は──」

リナは強調した。


「70〜80%。つまり、血液中のアルコール濃度の1,400〜1,600倍なの」


【濃度の決定的な違い】

「つまりね──」

リナは腕を組んだ。

「お酒を飲んでも、体内のアルコール濃度は、ウイルスを殺すには全然足りないのよ」


「例えば──」

リナは計算を続けた。

「血中アルコール濃度を70%にしようとしたら・・・」


「体重60kgの人で、血液量は約4.8L。その70%をアルコールにするには──」

「4,800ml × 0.7 = 3,360ml = 3.36Lのエタノールが必要」

「日本酒1合に含まれるエタノールは約28ml。だから──」

「3,360ml ÷ 28ml = 120合」


リナはにやりと笑った。

「つまり、日本酒を120合、一升瓶6.7本分を一気に飲まないと、血中アルコール濃度は70%にならないわ」

「そ、そんなに!?」

健太が驚愕した。

「しかも──」

リナは付け加えた。


「血中アルコール濃度が0.4%(つまり120合を飲んだ時の濃度)になったら、確実に死ぬわよ。アルコール中毒でね」


血中アルコール濃度と症状:


0.05%: ほろ酔い

0.10%: 酩酊

0.15%: 泥酔

0.30%: 昏睡

0.40%: 死亡


70%: 完全に死亡(当然)


「つまり、ウイルスを殺せる濃度のアルコールを体内に入れたら、ウイルスより先に自分が死ぬってことよ」


【喉や胃のウイルスはどうなる?】

「でもよ、リナ」

源さんが反論した。

「血液中じゃなくても、喉とか胃に直接アルコールが触れるだろ? そこのウイルスは殺せるんじゃねえか?」

「いい質問ね」

リナは頷いた。

「確かに、飲んだアルコールは喉や食道、胃を通過する。でも──」


リナは説明した。

「アルコールが喉に触れてる時間は、ほんの数秒よ」

「ウイルスを不活化するには、70%以上のアルコールに、少なくとも15〜30秒は浸さないといけないの」

「日本酒のアルコール度数は15%。しかも、数秒で通過する」

「これじゃあ、ウイルスはほとんど死なないわ」


【手指消毒の条件】

・アルコール濃度: 70〜80%

・接触時間: 15〜30秒

・十分な量で覆う


【お酒を飲んだ場合】

・アルコール濃度: 15%(日本酒)、5%(ビール)

・接触時間: 数秒

・すぐに胃に流れる→ ウイルス不活化には不十分


「しかも──」

リナは続けた。

「風邪やインフルエンザのウイルスは、喉や鼻の粘膜の細胞の中に入り込んでるの」

「お酒は粘膜の表面を通過するだけで、細胞の中には届かないわ」


【ウイルスはどこにいるのか】

「ちょっと待って、リナさん」

健太が質問した。

「ウイルスって、喉にいるんじゃないの?」

「喉の粘膜の細胞の『中』にいるのよ」

リナは図を描いた。


【ウイルス感染のプロセス】


1. ウイルスが喉の粘膜に付着

2. 粘膜細胞の中に侵入

3. 細胞内で増殖

4. 新しいウイルスが放出される

5. 他の細胞に感染拡大


「つまり、風邪をひいてる時っていうのは、ウイルスはもう細胞の中にいるの」

「お酒を飲んでも、細胞の外側を通過するだけ。細胞の中のウイルスには届かないわ」


「例えるなら──」

リナは分かりやすく説明した。

「家の中にいる泥棒を、家の外から水鉄砲で撃つようなもの。意味ないでしょ?」

「なるほど・・・」

客たちは納得したように頷いた。


【むしろ悪化する理由】

「それどころか──」

リナは真剣な表情になった。

「風邪やインフルエンザの時にお酒を飲むと、症状が悪化するのよ」

「え、なんで?」

「理由は3つある」

リナは指を立てた。


【理由1: 免疫機能の低下】

「まず第一に──アルコールは免疫機能を低下させるの」


【アルコールと免疫系】


アルコール摂取

1. 白血球(好中球)の機能低下

・細菌やウイルスを食べる能力が低下


2. NK細胞(ナチュラルキラー細胞)の活性低下

・ウイルス感染細胞を攻撃する能力が低下


3. サイトカイン産生の異常

・炎症反応が過剰または不足


4. 抗体産生の低下

・免疫記憶が弱くなる

ウイルスへの抵抗力が低下


「つまり、お酒を飲むと、ウイルスと戦う兵隊さん(白血球)が弱くなるのよ」

「まじか・・・」

「特に、慢性的な飲酒や、大量飲酒は、免疫機能を著しく低下させるわ」


リナは文献を引用した。

「研究によると、1回の大量飲酒(5杯以上)の後、免疫機能は数時間から数日間低下するの」

「風邪をひいてる時は、ただでさえ免疫系が戦ってるのに、そこにアルコールを入れたら──」

「免疫の援軍を減らすようなものよ」


【理由2: 脱水症状】

「第二の理由──アルコールは脱水を引き起こすの」

リナは前に説明したメカニズムを復習した。


【アルコールの利尿作用】


アルコール摂取

抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌抑制

腎臓での水分再吸収が減少

尿量増加

脱水症状


「風邪やインフルエンザの時は、発熱で汗をかいて、すでに脱水気味なの」

「そこにアルコールを飲むと、さらに脱水が進むわ」

「脱水になると──」


脱水の悪影響:


・血液がドロドロになる

→ 栄養や酸素が細胞に届きにくい

→ 免疫細胞の活動が鈍る


・粘膜が乾燥する

→ バリア機能が低下

→ ウイルスが侵入しやすくなる


・老廃物の排出が滞る

→ 毒素が体内に蓄積


「つまり、お酒を飲むと、風邪の症状が長引くのよ」


【理由3: 肝臓への負担】

「第三の理由──肝臓への負担」

リナは肝臓の図を描いた。


【風邪の時の肝臓の仕事】


通常の肝臓の仕事:

・栄養の代謝

・解毒

・胆汁の生成

・タンパク質の合成

+

風邪の時の追加の仕事:

・免疫タンパク質(抗体、補体)の合成

・炎症性サイトカインの代謝

・ウイルス由来の毒素の解毒

+

アルコール摂取時の仕事:

・エタノールの分解

・アセトアルデヒドの分解


「つまり、風邪の時にお酒を飲むと──」

リナは強調した。

「肝臓は、『ウイルスと戦う』『お酒を分解する』という二つの仕事を同時にしないといけないの」

「結果、どちらも中途半端になって、風邪の治りが遅くなるわ」


「しかも──」

リナは付け加えた。

「アルコールの分解には、ビタミンB群やナイアシンが大量に消費されるの」

「これらの栄養素は、免疫機能にも必要。だから、お酒を飲むと、免疫に使える栄養が減っちゃうのよ」


【薬との相互作用】

「それからね──」

リナは重要なポイントを付け加えた。

「風邪薬や解熱剤を飲んでる時に、お酒を飲むのは絶対にダメよ」

「なんで?」

「薬とアルコールが相互作用を起こすからよ」


【薬とアルコールの相互作用】


1. アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)+ アルコール

→ 肝毒性が増強

→ 肝障害のリスク


2. 抗ヒスタミン薬(鼻水止め)+ アルコール

→ 中枢神経抑制が増強

→ 過度の眠気、めまい


3. 総合感冒薬 + アルコール

→ 複数の相互作用

→ 予測不能の副作用


「特に、アセトアミノフェンとアルコールの組み合わせは危険」


リナは真剣な表情で言った。

「両方とも肝臓で代謝されるから、肝臓に大きな負担がかかる」

「最悪の場合、急性肝不全を起こすこともあるわ」

「こええ・・・」

健太が青ざめた。


【コロナウイルスの場合】

「じゃあ、コロナは?」

別の客が質問した。

「コロナも飲酒で予防できないの?」

「当然できないわ」

リナはきっぱりと答えた。


「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)も、インフルエンザウイルスや風邪のウイルスと同じ」

「細胞の中に入り込んで増殖するから、お酒を飲んでも意味がないの」


「しかも──」

リナは最新の研究を引用した。

「研究によると、過度の飲酒は、COVID-19の重症化リスクを高めることが分かってるわ」


【アルコールとCOVID-19】


過度の飲酒

1. 肺の免疫機能低下

→ 肺炎のリスク増加


2. 全身の炎症反応異常

→ サイトカインストーム(過剰な免疫反応)


3. ACE2受容体の発現変化

→ ウイルスの侵入が容易に

COVID-19重症化リスク増加


「WHOも、2020年のパンデミック初期に、『アルコール摂取はCOVID-19への脆弱性を高める』と警告してるのよ」


【では、本当に効果があるものは?】

「じゃあ、風邪やインフルエンザの予防に、本当に効果があるのは何なんだ?」

源さんが聞いた。

「いい質問ね」

リナは新しい紙を取り出した。

「科学的に効果が証明されてる予防法を教えてあげるわ」


【科学的に正しい予防法】

「まず第一に──手洗い」


【正しい手洗いの方法】


1. 流水で手を濡らす

2. 石鹸をつける

3. 手のひら、手の甲、指の間、爪の間、手首まで

30秒以上かけて洗う

4. 流水でよく洗い流す

5. 清潔なタオルで拭く


効果:

・ウイルスや細菌を物理的に除去

・石鹸の界面活性剤がウイルスの外膜を破壊

「手洗いだけで、感染リスクは約40%減るのよ」

「第二に──マスク」


【マスクの効果】


・飛沫の拡散防止(自分が感染源の場合)

・飛沫の吸入防止(他人から感染する場合)

・手で顔(特に鼻や口)を触るのを防ぐ

効果:

・適切に使用すれば、感染リスクを50〜70%減少


「第三に──換気」

「ウイルスは、密閉空間で空気中に浮遊する。定期的に換気することで、ウイルスの濃度を下げられるわ」


「第四に──栄養と睡眠」


免疫力を高める生活習慣:


1. バランスの良い食事

・ビタミンC(C₆H₈O₆): 柑橘類、ブロッコリー

・ビタミンD(C₂₇H₄₄O): 魚、キノコ

・亜鉛(Zn): 牡蠣、肉類

・タンパク質: 肉、魚、豆類


2. 十分な睡眠(7〜8時間)

・睡眠不足は免疫機能を低下させる


3. 適度な運動

・過度ではない運動は免疫を活性化


4. ストレス管理

・慢性ストレスは免疫を低下させる


5. 禁煙・節酒

・喫煙とアルコールは免疫を低下させる


「そして──」

リナは少し言葉を選んだ。

「予防接種という選択肢もあるわ。ただし──」

リナは付け加えた。


「ワクチンに関しては、効果と副反応について様々な意見があるの。個人の体質、基礎疾患、価値観によって、選択は分かれるわ」

「だから、ワクチンを打つかどうかは、かかりつけ医と相談して、自分で判断することが大切よ」

「私が言えるのは──」

リナは続けた。


「手洗い、マスク、換気、栄養、睡眠といった基本的な予防法は、誰でもできて、副作用もない確実な方法だってこと」


「まあ、確かにな」

源さんは頷いた。

「基本が一番大事ってことか」

「そういうこと」


【適度な飲酒なら?】

「じゃあ、全くお酒飲んじゃダメなの?」

源さんが不満そうに言った。

「そんなことは言ってないわ」

リナは微笑んだ。

「適量の飲酒なら、むしろストレス解消になって、間接的に免疫にプラスになることもあるわ」


「でもね──」

リナは指を立てた。

「『適量』というのがポイントよ」


【適量の飲酒の定義】


男性: 純アルコール20g/日以下

= ビール中瓶1本

= 日本酒1合

= 焼酎0.6合


女性: 純アルコール10g/日以下

= 上記の半分


条件:

・健康な時のみ

・風邪やインフルエンザの時は禁酒

・週に2日は休肝日

「適量の飲酒には、こんな効果があるわ」


適量飲酒のメリット:


1. ストレス軽減

→ 慢性ストレスによる免疫低下を防ぐ


2. 血行促進

→ 栄養や免疫細胞の循環が良くなる


3. リラックス効果

→ 睡眠の質向上(ただし飲みすぎは逆効果)


4. 社交の促進

→ 精神的健康の向上


「でも──」

リナは強調した。

「これは『健康な時』の話。風邪をひいてる時、熱がある時、体調が悪い時は、絶対にお酒を飲んじゃダメよ」


【民間療法の真実】

「じゃあさ、リナ」

健太が質問した。

「『卵酒』とか『ホットウイスキー』とか、昔から風邪に効くって言うじゃん。あれもダメなの?」

「いい質問ね」

リナは頷いた。

「卵酒やホットウイスキーが『効く』と言われる理由を、科学的に分析してみましょう」


【卵酒の分析】

「卵酒の材料は──日本酒、卵、砂糖」


【卵酒の成分】


卵:

・タンパク質(アルブミン、グロブリン)

・ビタミンA(C₂₀H₃₀O)

・ビタミンB群

・ビタミンD(C₂₇H₄₄O)

・亜鉛(Zn)


日本酒:

・エタノール(C₂H₅OH)

・アミノ酸

・ビタミンB群


砂糖:

・グルコース(C₆H₁₂O₆)


「確かに、卵には免疫に必要な栄養素がたくさん含まれてる」

「でも──」

リナは説明した。

「卵酒が『効く』のは、卵と砂糖の栄養のおかげであって、アルコールのおかげじゃないの」

「むしろ、アルコールは余計」

「卵酒を温めて飲むと、体が温まって寝つきが良くなる──これは事実」

「でも、それは『温かい飲み物』だからであって、アルコールである必要はないわ」


「卵と砂糖を、ホットミルクに入れて飲んでも、同じ効果が得られるのよ。しかもアルコールのデメリットなし」


【正しい風邪対策】

「じゃあ、風邪をひいた時は、何を飲めばいいんだ?」

「それを教えてあげるわ」

リナは厨房に入り、いくつかの飲み物を用意した。


【リナ特製・風邪対策ドリンク】

「まず、これ──ホットレモネード」


【ホットレモネード】


材料:

・レモン果汁(ビタミンC、クエン酸)

・蜂蜜(グルコース、抗菌作用)

・生姜(ジンゲロール C₁₇H₂₆O₄)

・お湯


効果:

・ビタミンCが免疫をサポート

・蜂蜜が喉の炎症を和らげる

・生姜が体を温め、血行促進

・水分補給


「次、梅干し番茶」


【梅干し番茶】


材料:

・梅干し(クエン酸 C₆H₈O₇)

・番茶(カテキン C₁₅H₁₄O₆)

・お湯


効果:

・クエン酸が疲労回復

・カテキンに抗ウイルス作用

・梅干しの塩分で電解質補給


「そして、鶏がらスープ」


【鶏がらスープ】


材料:

・鶏ガラ(コラーゲン、アミノ酸)

・野菜(ビタミン、ミネラル)

・生姜、ニンニク


効果:

・アミノ酸が免疫細胞の材料に

・温かいスープで体温上昇

・消化に優しい

・水分と栄養を同時に摂取


「これらの飲み物は、全部アルコールなしで、風邪の回復をサポートするわ」


【まとめ】

リナは腕を組んで、客たちを見回した。

「じゃあ、まとめるわよ」

「『酒を飲んで体の中からアルコール消毒』は、完全な迷信」

「なぜなら──」


【お酒で消毒できない理由】


1. 濃度が足りない

・血中アルコール濃度は最大でも0.4%(致死量)

・ウイルスを殺すには70%以上必要


2. 接触時間が短い

・喉を通過するのは数秒

・ウイルス不活化には15〜30秒必要


3. ウイルスは細胞の中にいる

・お酒は細胞の外を通過するだけ

・細胞内のウイルスには届かない


4. 逆効果

・免疫機能が低下する

・脱水症状が悪化する

・肝臓に負担がかかる

・薬との相互作用のリスク


「だから──」

リナは指を立てた。

「風邪やインフルエンザ、コロナの時は、お酒を飲まないこと!」

「科学的に正しい予防法は──手洗い、マスク、換気、栄養、睡眠」

「そして、風邪をひいたら──安静、水分補給、栄養補給、必要なら医療機関受診」


「わかった?」

客たちは、しぶしぶ頷いた。

「わかったよ・・・」

源さんはため息をついた。

「じゃあ、今日はお酒やめとくか」

「賢明ね」

リナは微笑んだ。

「代わりに、特製ホットレモネード、サービスするわ」


【エピローグ】

その夜、源さんは早めに帰宅した。

リナに教わったホットレモネードを飲んで、早めに寝る。


翌朝。

「おお・・・喉の痛みが引いてる」

源さんは驚いた。

いつもなら、「風邪には酒だ」と飲んで、翌日もっと悪化してたのに。

その日の夕方、源さんは『ナツメ亭』に顔を出した。


「リナ、すげえよ。風邪、すぐ治った」

「でしょ? 魔法じゃない、化学よ!」

リナはにっこり笑った。

「アルコール消毒は、手にするもの。飲むものじゃないのよ」

「ああ、よくわかったよ」

源さんは笑った。

「でも、元気になったから、今日は祝杯あげていいか?」

「・・・ほどほどにね」

リナは呆れたように笑った。


冬の夜。

『ナツメ亭』には、今日も笑い声が響いていた。

【今回登場した化学式と成分】


エタノール(C₂H₅OH): アルコールの正式名称

ビタミンC(C₆H₈O₆): 免疫サポート

クエン酸(C₆H₈O₇): 疲労回復

ジンゲロール(C₁₇H₂₆O₄): 生姜の辛味成分、血行促進

カテキン(C₁₅H₁₄O₆): 緑茶の抗ウイルス成分

グルコース(C₆H₁₂O₆): エネルギー源

ビタミンA(C₂₀H₃₀O): 粘膜の健康維持

ビタミンD(C₂₇H₄₄O): 免疫調整


【アルコール消毒の条件】


濃度: 70〜80%

接触時間: 15〜30秒以上

適用場所: 体外(手指、物品の表面)


【血中アルコール濃度と症状】


0.05%: ほろ酔い

0.10%: 酩酊

0.15%: 泥酔

0.30%: 昏睡

0.40%: 死亡


【科学的に正しい風邪・インフルエンザ予防法】


手洗い(30秒以上)

マスク着用

換気

栄養バランスの良い食事

十分な睡眠(7〜8時間)

適度な運動

ストレス管理

予防接種(※個人の判断による)


※予防接種について: ワクチンの効果と副反応については、医学的にも社会的にも様々な見解があります。接種の判断は、かかりつけ医と相談の上、個人の体質、基礎疾患、価値観を考慮して行うことが重要です。本作品は特定の立場を推奨するものではありません。

【風邪をひいた時にすべきこと】


安静にする

十分な水分補給

栄養補給(特にビタミンC、亜鉛、タンパク質)

禁酒

必要なら医療機関受診


【風邪をひいた時にしてはいけないこと】


飲酒

喫煙

激しい運動

無理な活動

薬とアルコールの併用



【伏木より注記】

本作品は、アルコール摂取がウイルス感染症の予防や治療に効果がないことを、化学的・医学的根拠に基づいて説明するものです。


予防接種(ワクチン)に関しては、その効果と副反応について医学界でも議論があり、個人の体質や価値観によって判断が分かれることを認識しています。本作品は特定の立場を推奨するものではなく、読者各自が医師と相談の上、自己判断で選択することを尊重します。


確実に言えるのは、手洗い、マスク、換気、栄養、睡眠といった基本的な予防法は、科学的根拠があり、副作用もなく、誰でも実践できる方法であるということです。

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