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6 カオスな入院生活 1

ここからはリメイク版だけでのお話になります

(*´∇`*)♪

さて、これはどうしたことだろう。

なぜか突如始まってしまった、アンリのお見舞いに来てくれたご令嬢同士の " 言い合い(バトル) " 。

アンリは治りかけの頭の傷をさすりながら、困ったようにそれぞれの顔を見比べる。


「貴方はフェリーさんの何なんですの!?」

「私は彼女の、ゆ、ゆ、友人っ、ですわ!」

「えっ‥‥‥ほ、本当ですの、フェリーさん!?」


いきなり話題を振られ、レイルは目をウロウロさせながら答えた。

「え~っと‥‥‥その、み、皆さん、誰ですか?」


「「は???」」

驚きのあまり、口が少々お悪くなってしまった様子のご令嬢二人。

その後ろに控えていたそれぞれのご令嬢の取り巻き立ちも、目を点にしてアンリを見ている。


‥‥‥一応説明しておこう。

アンリは記憶喪失なわけではない。ただ単に、ちょっと、いや、たまに、いや、いつも記憶があいまいになりがちなだけなのだ。

ちなみに、アンリのことで言い争っている二人は、アンリの友人(?)のご令嬢と、アンリが地震の時に助けたご令嬢だ。


「ちょ、え、フェリーさん、昨日会いましたわよね!? お医者さんを呼んできますわ、と言って部屋から出て行ったのが私ですわ!」

「‥‥‥? あ、あ~っ」

必死のご令嬢のおかげで、なんとか記憶を取り戻せた様子のアンリ。

そして、続いてもう一人のご令嬢も、

「ほ、ほら! 貴方の学園での初めての友達ですわよ!」

と必死に言う。

本当なら、生徒会やめろ事件を言った方がアンリは思い出しやすいだろうが、そんなことを言ったと相手の令嬢に知られたら「そんなの友達なんて言えませんわ! 私が代わりの友達になります! おーっほっほっほ」とかなんとか言われそうなので、言いたくても言えないのである。


「学園での、初めての、とも、だち‥‥‥」

うーん、と考えるアンリに注目が集まる。

それぞれ、違う意味でゴクリとご令嬢たちが息を飲んだ時、すっとアンリが顔を上げた。

思い出してくれたんですのね! と嬉しそうなご令嬢に向かって、アンリは笑顔で言い放った。

「すみませんが、思い出せません!」


ガックリと床に膝をついたご令嬢に向かって、「オホホホホ! やーっぱり嘘だったんですのね~!!」と、もう一人のご令嬢が高笑いで追い打ちをかける。

打ちのめされてしまった様子のご令嬢を流石にかわいそうに思い、アンリは高笑いをしたご令嬢を叱った。

「もう、ダメですよ! 可哀そうじゃあないですか」


すっかり勝った気になっていたご令嬢が、アンリの突然の叱責にアタフタとし始める。

「で、ですが、フェリーさん、嘘はいけないと思いますわ!」

「嘘かどうかわからないじゃないですか!」

ぴしゃっと言い放ち、アンリは優しくご令嬢に声をかけた。

「もしかしたら、名前を聞いたら思い出すかもしれません。お名前をうかがっても?」


にこにこしているアンリに向かって、( 名前なんて教えてないもの‥‥‥どうせわかるはずなんかないわ‥‥‥ )と思いつつ、口を開く。


「クリス。クリス・アーサーですわ」


それを聞き、あぁっ! とアンリはご令嬢―——クリスを指さす。

「クリスさんでしたか! えぇ、えぇ、思い出しましたよっ!」

興奮気味に言うアンリを見て、クリスはいぶかし気に眉を動かした。

「でも、私は会ったときに自己紹介なんてしていませんもの、わかるはずがありませんわ」


それに対し、アンリはふふっと余裕の笑みを浮かべる。

「舐めないでください! 貴方の名前はもう調べ済みなんです!」

メイル、とアンリが呼びかけると、部屋の隅ですっかり存在感を消していたメイルが、はぁい、と返事をする。

「さあ、クリスさんの調べた情報をかたっぱしから言ってください!」

「かしこりましたぁ~」

メイルはすすすっとクリスの前に立つ。


「クリス・アーサー様ぁ。男爵令嬢でぇ、末っ子の貴女様を男爵夫妻様たちはたいそう可愛がっており、甘やかされて育ちまぁす。歳はアンリ様と同じくぅ、14歳ですねぇ。好きなスイーツはぁ、ケーキ、マカロンなど多々ありますがぁ‥‥‥一番好きなのはワッフルですねぇ。そしてぇ、夜はぬいぐるみと一緒でなければ眠れずぅ、たまに兄の寝床に潜りこんでぇ、一緒に眠る趣味があるそうですねぇ。さらに‥‥‥」

続けようとしたメイルの言葉をさえぎるようにして、アンリは言った。

「メイル、そろそろいいです。ありがとう」

感謝の言葉も忘れず言ったアンリに、メイルは言葉を遮られたことに特に気分を害した様子を見せず、しずしずと部屋の角に下がった。


そして、クリスと言えば‥‥‥真っ赤な顔で、ワナワナとアンリを見上げていた。

(見上げていた、というのはアンリのほうが背が高いわけではなく、ずっと床に座り込んだままだからである)

「な、な、な、なんで‥‥‥!」

「メイルはもともと警視総監なので、情報を集めるのがうまいんです」

ちなみに、もう一つ理由はあった。

それは、アンリがあまりにも嬉しそうに友達ができたことを報告し、その友達のことを調べてほしい、と言ったからだった。

そう言われて、アンリのためならなんでもするメイルが、張り切らないはずがないのである。

そうして張り切りすぎなメイルは情報をかき集め、超・プライベート☆な情報までも集めてしまった、というワケである。


全く、迷惑な話である。

プライベートも何もないではないか。

しかもアンリはクリスの屈辱を全く分かっておらず、ノンビリとメイルに「お茶取ってくれる?」などと言っていた。


そして‥‥‥もう一人のご令嬢が、青ざめた顔でよろよろとアンリに近寄る。

「さ、流石に私の情報は調べていませんわよね??」

「え? 調べましたよ」

アンリに即答され、ガックリと床に崩れ落ちる。


とどめと言わんばかりにメイルが近寄ってきて、必殺・無表情でたんたんと人様のプライベートを公開していく。

「リリアン・ネーデル様ですねぇ。好きな香水はぁ、 " ローズ フレグランス " のミントの香りでぇ、好きな食べ物はクロワッサン、メロンパンなどのパン系がお好きなようですねぇ。かなりのシスコンでぇ、8コ下の妹をたいそう可愛がっておられるとか‥‥‥。趣味は生け花でぇ、一番好きなお花は薔薇だそうですねぇ」


そこでメイルは一旦言葉を止め、様子を窺うようにリリアンの顔を覗き込んだ。

真っ赤になっているのを確認し、メイルは部屋の隅っこに下がる。

一方、アンリはなんでそんな顔が真っ赤なんでしょうと言わんばかりに首をかしげており、それが二人のご令嬢の怒りに拍車をかけてしまったのだった。

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