第15話試練の先に
桜井ほのかとしてのアイドル活動を続ける中で、私は次第に成長し、少しずつ自信を持つようになった。
だが、思いもよらない試練が私を待ち受けていた。自分が想像していた以上に、音楽業界は厳しく、過酷な場所だということを実感し始めていた。
その日、事務所から連絡が来た。
新しい仕事の依頼ではなく、私にとっては非常に重大な問題が発生していた。
「桜井さん、少しお話ししなければならないことがあります」
マネージャーが深刻な顔をして、私に話しかけてきた。
「何かあったんですか?」
「実は、次のシングルのプロモーションが大きな問題になっていて、いくつかのメディアで誤解を招く報道が出てしまったんです」
その言葉を聞いた瞬間、私の心が一気に沈んだ。
私はしばらく言葉を失った。まさか、私がこれまで一生懸命に築き上げてきたものが、こんな形で崩れかけるなんて考えてもみなかった。
「具体的にはどういうことですか?」
「いくつかのメディアが、あなたと他のアイドルとの不仲説を取り上げ、過剰に騒ぎ立てています。その結果、ファンの間でも不安を感じている人が増えているようです」
マネージャーは言葉を選びながら続けた。
「それに、次のライブのリハーサルも、突然スケジュールが変更されたりして、スタッフたちも慌ただしくなっています。今、最も重要なのは、あなた自身が冷静にこの状況を乗り越えることです」
その言葉に、私は何も答えることができなかった。
不安や恐れ、そして無力感が押し寄せてきた。
今までの努力が一瞬で否定されるような気がして、どうすればいいのか分からなくなった。
その夜、私は自分の部屋で悩んでいた。
これからどうすれば、この状況を乗り越えられるのだろうか。
ファンの期待に応え、音楽を通して自分を表現することが私の生きる力だと思っていたけれど、今その力をどこに求めればいいのか分からない。
「ほのか、どうしたんだ?」
突然、部屋のドアがノックされ、陸の声が聞こえた。
「何も…考えてるだけ。ちょっといろいろと悩んでて」
「悩んでるのか?」
陸は心配そうにドアを開けて、部屋に入ってきた。
「うん、ちょっとした問題があって。私、どうすればいいのか分からない」
その時、陸は私の隣に座り、少し黙ってから言った。
「お前がやりたいことを、俺は応援してる。どんな時でも、俺はお前の味方だよ」
その言葉に、私は一瞬涙がこぼれそうになった。
私は必死に涙を堪えながら、陸に微笑んだ。
「ありがとう、でも、どうしていいか分からなくて…このままでは、私、みんなを失ってしまうんじゃないかって怖い」
陸は静かに私の肩を抱きしめて、穏やかな声で言った。
「お前がそんなことで迷う必要はない。みんながほのかのことをどう思ってるか、ちゃんと分かってる。俺も、ファンのみんなも、お前のことを信じてる」
その言葉が胸に響いた。
私がどんなに迷っても、みんなは私を信じてくれている。そして、私も自分を信じるべきだと、やっと気づくことができた。
数日後、私は再びステージに立つことを決意した。
不安やプレッシャーを抱えながらも、私はこの試練を乗り越えなければならない。自分にできることは、歌い続けることだけだと思った。
ライブのリハーサル中、私はいつも以上に集中していた。
スタッフや他のメンバーが周りで忙しそうにしている中、私は自分の歌に全力を注いでいた。
「桜井さん、いい感じですよ」
プロデューサーが言ってくれた言葉が、私の背中を押した。
彼の期待に応えるために、私はさらに歌に込める情熱を強くした。
そして、いよいよライブ当日がやってきた。
会場に足を踏み入れると、ファンの歓声が響き渡り、私はその瞬間、心の中で決意を固めた。
「私は、私らしく、歌い続けるんだ」と。
ライブが始まり、私はステージに立った。
観客の前に立つと、これまで感じたことのない緊張が全身に走った。でも、その緊張を力に変えて、私は歌い始めた。
一曲目が終わり、次の曲へと移る間、私は観客の反応を見ながら心を落ち着けた。
そして、次の瞬間、私はその場で深呼吸をし、大きな声で歌詞を歌い始めた。観客の目の前で、私は歌い、笑顔を見せた。
その瞬間、すべての不安が消え、私は自分の力を信じることができた。
ライブが終わると、ファンからの大きな拍手と歓声が私に届いた。
その瞬間、私は心から安心し、満ち足りた気持ちになった。
これまで支えてくれた陸やファン、スタッフのみんなに感謝の気持ちが溢れた。
その夜、事務所に戻ると、マネージャーから一通のメールが届いた。
「ファンからの応援メッセージが殺到しており、メディアでも否定的な報道が減少しています。今後のプロモーションに大きな影響を与えることはないでしょう」
その言葉に、私は胸を撫で下ろした。
この試練を乗り越えた先に、私はもっと強くなれることを実感した。




