第13話新たな挑戦
新しいライブが迫る中で、私は心の中で不安と期待が入り混じっていた。
ファンとの交流イベントを経て、少しずつ自信を取り戻し始めたものの、次のステージに向けて心の準備がまだできていないような気がしていた。
事務所に通う日々が続く中で、陸とも以前よりも自然に会話を交わすことが増えてきた。
けれど、私たちの関係は一歩前進したようで、まだどこか不安定な部分も残しているような気がしていた。
「ほのか、お疲れ様」
ある日、事務所での打ち合わせが終わると、陸が待っていた。
彼はいつものように穏やかな笑顔を見せてくれたけれど、目の奥には少しだけ疲れたような影が感じられた。
「お疲れ様、どうしたの? 今日は少し疲れてる?」
私は気遣いながらも、彼に声をかける。
「いや、別に。ただ、次のライブのことでいろいろ考えてて」
陸は少しだけ視線を外しながら言った。
その言葉に、私は胸の中で少しだけ違和感を覚えた。
陸はよく、何かを言いたそうにしていることがあった。でも、今の私はそれに気づくことすらできていなかった。
「ライブ、楽しみだね。新曲も披露するし、みんながどんな反応をするのか、すごく気になるよ」
「うん、それは楽しみだな。でも、今回のライブはちょっと特別だと思ってる。みんなの期待が大きすぎて、逆にプレッシャーも感じてる」
陸の言葉に、私は少し心を痛めた。
彼はいつも周りに気を使って、自分のことを後回しにしてしまう。そのことを私はよく知っている。
「でも、私がいるから大丈夫だよ。私も一緒に頑張るから」
私はそう言って、陸の肩を軽く叩いた。
その瞬間、陸はふっと笑った。
「ありがとう、ほのか。でも、お前の方がもっと大きなプレッシャーを感じてるんじゃないか?」
私は少し驚いたような顔をして、彼を見つめた。
確かに、私はこれから大きな試練を迎えることになるかもしれない。
アイドルとして、歌手として、そして何よりも自分自身を証明するために。
「私も頑張るから、陸くんも一緒に頑張ろうね」
その言葉に、陸は無言で頷いた。
でも、その頷きには何かを抱え込んでいるような印象があった。
数日後、私たちはライブのリハーサルに参加することになった。
会場はもうすぐ本番を迎える準備が整っていた。
ライブのために用意された新しい衣装を着て、私たちはステージ上での動きや歌の確認をした。
リハーサル中、私はいつもよりも多くのことを考えていた。
新曲の歌詞が自分にとってどれだけ大切なものか、その歌を通して何を伝えたいのかを、改めて感じていた。
そして、観客がどんな反応をしてくれるのかが気になって仕方がなかった。
「桜井さん、調子はどうですか?」
マネージャーが声をかけてきた。
「うん、リハーサルは順調だけど、少し緊張してるかも」
「その緊張感が大切ですよ。大きな舞台でも、楽しんで歌ってくれるのが一番ですからね」
その言葉を聞いて、私は改めて気持ちを落ち着けることができた。
どんなに大きなプレッシャーを感じても、最終的に大事なのは自分が楽しんでパフォーマンスすることだと思えたから。
ライブ当日。
会場は予想以上に大きく、観客の熱気がすでに伝わってきた。
私はステージ袖で少しだけ深呼吸をした。
「ほのか、頑張ってな」
陸が私の隣に来て、優しく声をかけてくれる。
「うん、ありがとう。陸くんも大丈夫だよね?」
「もちろんだ。お前がいるから大丈夫だよ」
その言葉に、私は少し安心してステージに立つことができた。
――そして、ライブが始まった。
私がステージに登場すると、会場中から大きな歓声が上がる。
その声に押しつぶされそうになりながらも、私はマイクを握りしめて歌い始めた。
「春花」――私が心から大切にしているこの曲を歌うとき、会場の空気が一瞬で変わるのを感じた。
歌詞が私の心に直接届くような感覚があった。
ファンたちが一緒に歌ってくれるその瞬間、私はアイドルとして生きる喜びを感じていた。
途中で、陸もステージに登場し、サポートとしてギターを弾いてくれる。
その瞬間、私は心から笑顔を見せることができた。
陸と一緒に演奏することで、どんなプレッシャーも感じないくらいに、心が軽くなった。
ライブが終わると、私は汗だくでステージを降りた。
観客の反応は予想以上に大きく、満足そうな顔をしたファンたちの姿が見えた。
その中には、涙を流している人もいた。それを見て、私は胸がいっぱいになった。
「ほのか、お疲れ様」
リハーサル後、陸が私を迎えに来てくれた。
「ありがとう、陸くん。おかげで、私は最高のパフォーマンスができた」
その言葉を聞いて、陸は照れたように笑った。
「お前の頑張りが一番だよ」
その後、私はファンとの交流を通じて、さらに多くのことを学んだ。
私が歌うことで、誰かの心が少しでも軽くなったり、元気になったりすること。それこそが、私がこの世界でアイドルとして生きる理由だと改めて思えた。
その日の夜、私は静かな部屋で、次の挑戦を考えていた。
今回のライブを終えた私は、もう一つのステップに進む準備ができたと感じている。
これからも、アイドルとして歌い続け、ファンを笑顔にするためにもっと努力しようと思った。
陸との関係も、少しずつではあるが進展しているように思えた。
お互いに支え合いながら、私はもっと強くなり、成長していけるはずだ。
その時、私のスマートフォンが鳴った。
画面に表示されたのは、事務所からのメッセージだった。
「次の仕事の依頼が来ました。あなたにとって、次の挑戦となる大きなプロジェクトです」
その瞬間、私は確信した。
これが私にとっての新たな挑戦であり、未来への第一歩だ。




