日常茶飯事2
【クレープ】※番外編『G.N.E学園』
エリート高校の生徒でもあり、新人売れっ子モデルの立沢陸。
高校が高校だけに芸能界に居る生徒も少なくない。
その彼女である唐橋侚。
めんどくさくなると連絡しなくなるという陸の噂に侚を落とすのに時間がかかった。
やっと恋人同士になった二人は、初めてのデート。
もちろん陸がバレると色々大変。
侚も侚で。
それは学校自体恋愛禁止。
仕事と嘘ついて先に出た陸。
一時間程遅れて出た侚。
寮から、曲がり角を曲がるまで安心出来ない。
やっと会えたのは街の野外カフェ。
待ち合わせと言えばここという程、人が多い。
何もここにしなくてもと思った侚だが、すぐ陸を見つけた。
「…せめて、モデルのオーラ消せよ」
そう呟いて近付いた。
余り声を出すのもバレると思い、何時もの眼鏡に帽子にマフラー深めな陸のコートを掴む。
それに気づいた陸は視線だけ移すと、侚で良かったと微笑む。
「行こ」
「どこ」
「さっき見てたんだけど…」
と、見せたのはクレープ屋。
しかも最近出来た店。
「ここか?」
「侚はいや?」
「…別に」
少し照れ臭そうに目線外す侚に陸は手をつなぐ。
本当に…モデルの仕事だけあって、背は高い、カッコいい。
そんな事思いながら着いたクレープ屋は、やはり混んでる。
しかも、男女別の校舎なのに、同じクラスの女子が居たのに気づいた。
「ヤバイかも」
「同じクラス?」
「そう」
学年すら違う二人。
どうしようかと悩む陸に、侚は見上げる。
「…俺行ってくるから、待ってろ」
「侚…」
「お前は隠れてろな」
離された手にありがとうと小さく呟く。
一時間過ぎてやっと来た侚。
「…疲れてる?」
「あいつらマジうるせー」
「聞かれたんだ」
「二人分って誰に?とか彼女?とか、ほんと要らねー…だから、彼女居ねーし、そもそも恋愛禁止だろうがって言い返してきた」
「そっか、ありがとう」
「いや…」
一気に不満爆発してしまった事に、侚は顔を赤くする。
持ち帰りようにしてもらったクレープ。
隠れるように、店舗が入ってるビルの階段にあるベンチに座り。
甘いキスと一緒に幸せになる、今日のオフ。
End
【豚丼】※『秘書の秘密』シリーズ
「今日の夕食、豚丼だからな」
そう言って先に上がった松川。
一人残される田崎は、秘書室で仕事が終わるのを待つ。
定時過ぎると、どちらかが先に帰ってもと。
それほど何かあるわけでもないが、万が一を考えて、社長の大梁が帰るまで残る。
今日は先に帰る日の松川。
二人暮らしのマンションに帰り、着替えすると夕食の準備。
元々、一人暮らしだった時に色々作っていたので何でも出来る。
広いガラステーブルの真ん中に花。
そんなお洒落な家具を選ぶのは松川しか居ない。
ふとキッチンに置いていた携帯が鳴る。
―帰る
たったそれだけでも進歩。
一緒に住むようになった頃は連絡すら寄越さないで帰ってきて、夕食どうするからの些細な喧嘩に。
豚丼ですらお洒落に盛り付ける松川。
父親のしつけで、王子様に周りから言われる程で。
ただいまの田崎の声に出来たどんぶりをテーブルに。
今日はガラステーブルは似合わない。
ランチョンマットを敷いて。
「おかえり、田崎」
「腹へった」
「着替えしてから来い」
「へいへい」
寝室に向かい、着替えした田崎はテーブルにつく。
「旨そ」
「旨いから」
いただきますと箸をつけた田崎は、本当に美味しそうに食べる。
その顔を見るのが松川の幸せで。
「悠哉も、悠哉の飯も好きだからな」
「…ありがとな」
嬉しそうに口元緩めると松川も箸をつけた。
End
【二十歳のお祝い】 ※白猫の誘惑
おはようと起きた惇は目の前の未だ寝てる雄大の顔を眺める。
出会いは雄大に飼ってと言ってから。
本当ならば、普通に高校行って生活してるのだが、惇は学校でイジメにあい、親は亡くなり、元恋人から逃げてきたようなもので。
次のあてが見つかるまでと住まわせて居たが、雄大にも変化。
恋人が出来たとしても、奥手で長続きしない、仕事以外はわからないそんな不器用な雄大とは今は年の差のある恋人。
「雄大」
「…ん」
今日は仕事が休みだと言っていた。
このまま起こさないでおこうと、静かにベッドから降りると真っ白いその肌に服を着る。
寝室から出て洗面所に行き顔を洗い、肌寒い室内にマンション備え付けのエアコンで暖房のスイッチを。
テレビをつけて、ソファに座ると膝を抱え顔を乗せた。
段々と春に近いが、未だにやっているイルミネーションがテレビから流れる。
そういえば…
「おはよう、惇」
頭を撫でられた感覚もあって顔を上げると口元緩める雄大。
「おはよう、雄大」
嬉しそうにした惇に、目線はテレビ。
「…そういえば、二十歳になるな」
「うん」
「お祝いするか」
「行きたい」
テレビを指す惇に。
「行きたい所、連れていってやる」
「うんっ」
久しぶりのデートに惇は嬉しくてしょうがない。
行きたい場所をネットで探して、わからない雄大にはこんな場所なんだよとか店はこんなんだよと説明。
一日で回りきれるのかとも思ったが、高校時代のトラウマで普段家から出ない惇に喜んで貰えるのならばと。
帰ってきたのは夜の九時。
買い物したのか、惇の手には数個の紙袋。
「惇、ちょっとまて」
玄関から廊下を歩いてきた雄大に足を止め振り返った。
「惇に」
そうポケットから出してきたのは、小さな箱。
いつ買ってきていたのか。
「あのな…惇が二十歳になるまでと思って」
受け取った惇は開けると、そこにはキラリと光った指輪。
黙ったまま見つめる惇に雄大は何かおかしな事したのかと。
「…惇?……嫌、か?」
頭をブンブンと横に振る。
「…ありがとう、飼ってくれて」
雄大に会えて良かった…
じゃなかったらそのまま何処にも行くあて無く、わからない所でのたれ死んでたのかもしれない。
「惇はもう、俺の恋人だ…大事な大切な…そんな言い方、もうするな」
「…うんっ」
二十歳、おめでとう…惇
End
【会いたくて聞きたかったバレンタインデー】※心の拠り所
卒業してから、真浩から姿を消した和幹。
連絡しても繋がらない。
心配で、三年生の時に担任だった先生に何気に聞いてみた。
どうやら、就職で県外に行ったらしい。
そもそも、真浩に就職の話なんて一切出てこなかった。
急に居なくなった恋人。
和幹の方から好きだって言ってきて、家に帰りたくないと言う和幹に、先生と生徒の関係も隠して付き合ってきたのに…
居なくなってからこんなに和幹が好きだなんて。
学校から別棟の二階建てアパートに帰る。
未だに、和幹の物がある。
歯ブラシに、充電器に。
和幹が姿を消してから真浩は、毎日のように酒を飲むようになった。
それまで休みの前日だったりで。
夜も十時過ぎた頃、眠くなり寝ようかと立ち上がった時にインターホンが鳴る。
こんな時間に誰だよ…
多少ふらつきながら、玄関に向かい鍵を開けドアを開けた。
「真浩…バレンタインデー、結婚しよ」
目の前には、会いたくても会えなかった
声が聞きたくても聞けなかった…
「か、ずき」
高校の頃寄りは余計大人になり。
両手差し出し和幹に抱きついた。
「会いたかったんだからな」
「ごめん…ちょっと、家の件もあって…県外に仕事してたけど、辞めてきた」
「は?」
離れた真浩は見ると苦笑いされた。
「ついでに、真浩の事も忘れようとしたけど…無理、だったから」
今朝辞表だし、唐突に辞めてきて新幹線に乗ったらこんな時間だと。
「…ねぇ、真浩、俺と結婚しよ…離れられない…忘れられない」
酔いか安心感か急にふらついた真浩は玄関に座り込む。
一歩入った和幹は玄関を閉めしゃがむ。
「真浩?大丈夫?」
「…もう、嫌だ…お前の事ばかり、毎日毎日」
「真浩…」
顔に両手をやった真浩は顔を上げた。
和幹のコート掴むと引き寄せ真浩から唇合わせた。
「…オッケーって事かな…」
「チョコレート…お前と会えなかったら自分で食うつもりだった」
「なら、それちょうだい、俺に」
「チョコレートも…俺も……全部お前にやる」
End