表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/21

第6球 乾杯!

 サボテン人間の頭部に狙いをつける。途中で軌道が変化することも計算に入れて。そして、思いっきり投げた。


 シュルルルルルル…… ズバンッ!


 風切り音が鳴る。そして、手前でシュート回転すると、石は見事にサボテン人間の頭に命中した。ストライク!


 サボテン人間の頭部は、花火のように砕け散る。そして、膝から崩れ落ちるように倒れると、光の粒子となって消えていった。まずは、1匹目を仕留めた。


「ば、馬鹿なッ!? 石を投げただけで…… しかも1発で倒しただと!? 信じられん!」


 エルダが驚愕の表情をしている。それにかまわず、俺は言った。


「2匹目も倒します! スキル発動! 石精製魔法!」


 教会の前には、もう1匹サボテン人間がいる。さっきより、ちょっと距離は遠いが。届かない距離ではない。石精製魔法で左手に石を産み出す。


 本日2球目の投石。振りかぶって投げる。流れるような投球フォームから、弾丸のように石が射出される。


 シュルルルルルルル…… ドゴォッ!


 2球目も頭部を狙って投げたのだが、少し手元が狂った。石は、サボテン人間の胸元を貫いた。


「グギャアァァァァーッ!!」


 絶叫するサボテン人間。立ったまま光の粒子となって消えていく。狙いは外れたが、今度も一撃で倒せたようだ。ホッとして息を吐いた。


 しかし、予想外のことが起きた。教会の入口から次々とサボテン人間が出て来たのだ。


「しまった! 今の叫び声を聞いて……」


 2匹目のサボテン人間の断末魔の叫び。その声を聞いて、残りのサボテン人間たちが出て来てしまったようだ。


「すみません、エルダさん!」


「謝る必要はないよ。向こうから出て来てくれるなら好都合。あんたは後ろから援護しな!」


 そう言うとエルダは、こちらに向かってくるサボテン人間たちに突撃して行った。手に持った剣で、勇敢に斬りかかっていく。


 残るサボテン人間の数は8匹。エルダが前線で引きつけている間に、俺は後ろから投石で倒すことにした。


 サボテン人間の動きは遅いが、さすがに囲まれると危険だ。エルダが囲まれないように、左右のサボテン人間を狙って投石で倒していく。


 そして、30分後―――


 俺たちは、全てのサボテン人間を倒した。サボテン人間が消えた後に、小さなキラキラした石が落ちている。俺は、それをひとつ拾った。


「この石は何だろう? 綺麗な石だな」


「そいつは魔石だよ。サボテン人間のドロップアイテムだ。冒険者ギルドで換金できるからね。全部拾っておきな!」


 換金できるアイテム。そう聞くと拾わない手はない。俺は、落ちている魔石を拾い集めた。全部で10個ある。


「エルダさん! 2人で山分けしましょう」


 俺がエルダに言うと、エルダは首を横に振った。


「私はいい。全部お前さんにやるよ。キュータ」


「えッ!? 全部もらっていいんですか? どうしてです?」


「どうしてって…… ほとんど、お前さん1人で倒したようなものじゃないか。当然だろ」


 確かに、サボテン人間を倒した数で言うと、俺がほとんどの数を投石で倒している。しかし、俺はエルダに言った。


「俺一人で倒したんじゃありません! エルダさんが前に出て敵を引きつけていてくれたから倒せたんです。だから、2人で倒したんです。魔石もちゃんと2人で分けましょう」


 それを聞いて、エルダはフッと笑った。


「あんた、面白い男だねえ。キュータ。気に入ったよ」


 その後、俺たちは他にサボテン人間の生き残りがいないか辺りを捜索した。廃墟となった教会の中も調べたが、サボテン人間はいなかった。どうやら全て倒したようだ。


 村へ帰ると村長へ報告する。サボテン人間を倒した証拠に、魔石を見せた。そして、約束の報酬を受け取った。


 俺への報酬は、銀貨5枚だった。銀貨1枚がどれほどの価値があるか知らないが。お金をゲットできたのはありがたい。


 また、今日も村長の家に泊めてもらえることになった。もちろん無料ただだ。これも嬉しい。


 その時、エルダが俺の元にやって来た。いつもの恐い感じではなく、穏やかな表情をしている。


「キュータ。酒場に飲みに行こう。私のおごりだ」


「えッ!? 飲みに……?」


 まさか、エルダからそんなお誘いを受けるとは思っていなかった。俺は、びっくりする。


「まさか、嫌だって言うんじゃないだろうね? 私の酒は飲めないとでも?」


「いえ、行きます! ありがとうございます!」


「なら決まりだ。ついておいで!」


 俺とエルダは、村にある小さな酒場に行く。小さな村なので、酒場は一つしかない。


 店の中には、テーブルとカウンター席があり、狭いがなかなか雰囲気のある店だ。俺とエルダは、テーブル席に向かい合って座った。


「マスター! 酒と料理を適当に頼む!」


 エルダがカウンターにいるマスターに声をかけた。マスターは「あいよ!」と返事をした。


 しばらくして、木製のジョッキが2つ運ばれてくる。エルダは、ジョッキを手に持って言った。


「ここのエールは、なかなかいけるぜ。さあ、まずは乾杯だ! モンスター退治の成功を祝って、乾杯といこうじゃねえか」


 ジョッキの中には、エールという酒が入っているようだ。俺もジョッキを手に持つと、エルダと乾杯をした。


 乾杯をすると、エルダはぐびぐびと喉を鳴らしてエールを流し込んでいく。それを見て、ビアガーデンにいるオッサンみたいな飲み方だなと思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 草野球の後のビールは美味いらしいので、これは理にもかなっている(したことがない人)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ