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第3球 魔球ツーシーム

 日が暮れると森の中はすぐに暗くなった。結局、あの後もう一度ワイルドボアと遭遇するも。投石スキルで無事に撃退することができた。そして、例によって肉をゲットする。


「とりあえず、今日はここで野宿にするか……」


 生活魔法のスキル『種火』を使って火を起こす。ちなみに、もうひとつの生活魔法『水』は、その名のとおり水を精製することができた。貴重な飲料水もゲットできて生活魔法は非常に便利だった。


 焚き火で木の枝を突き刺したボア肉やキノコをあぶる。肉の焼ける香ばしい香りが食欲をそそった。


「うん。肉も美味いし。このキノコもけっこういけるな」


 塩やコショウがあれば、なお良いのだが。この際、贅沢は言っていられない。


 食事を終えると睡眠に入るが。ここは、モンスターがうろついている森の中だ。用心のため枕元に石精製魔法で精製した石ころを何個か置いておく。モンスターに襲われたらすぐ投げれるように。


 だが、とくに何事もなく夜は明けた。


 昨日の焚き火の跡に、生活魔法を使って再び火を起こす。朝ごはんも焼いた肉とキノコです。もう昨日食べた時のような感動はない。白いご飯が恋しくなった。


 朝食を終えると再び歩き出す。同じような景色の森の中をひたすら歩く。たまにワイルドボアに遭遇して戦闘になるが、投石スキルで倒す。


 ワイルドボアは、真っすぐにしか突進して来ないので、それさえ避けてしまえば後は楽勝なのだ。だから、ワイルドボアが現れても「肉が来た」ぐらいにしか思わなくなった。


 お昼に休憩しながらステータスを見ているとレベルが上がっていた。それに伴ってHPとMPの上限も増えていた。


 今のところ攻撃は受けていないのでHPはあれだが。MPの増加は嬉しい。石精製魔法や生活魔法を使うのにMPはけっこう消費するからだ。


 MPが残り少なくなると頭が重く疲労を感じるようになる。精神面メンタルにかなり影響がでるようなのだ。


 魔法と投石が命綱の俺にとって、MPの運用は何よりも大事だった。ワイルドボアと戦った後は、ちゃんと休憩を取ってMPを回復させてから行動するようにしている。


 また、ワイルドボアを倒すといくらかスキルポイントも手に入った。なので、ちょこちょこ投石スキルの強化も進める事ができた。



 結局、この世界に転生してから3日目―――


 俺は、まだ森の中をさまよっていた。食事は、焼いたボア肉とキノコ。いい加減それも飽きてきた。


 そして、モンスターであるワイルドボアと遭遇する。正直「また肉か……」とうんざりする。たまには魚が食べたいよ。お刺身とかね。


 そう思いながらも石精製魔法で手のひらに石を精製。いつものように投げようと思ったが……


「そういえばスキルに『ツーシーム』があるな。たまには変化球でも投げてみるか」


 それは単純に思いついた遊びのようなものだった。相手がワイルドボアなら行動パターンは単純なので危険がない。突進さえ避ければ楽勝なのだ。


 俺は、いつもと違う握り方で石を投げる。野球ボールに縫い目があるような意識で。まあ、石なので実際に縫い目はないが。それに引っかけるような感覚で投じた。


 シュルルルルルル…… ズバンッ!


 石はワイルドボアの手前で小さくシュート回転したが、見事に頭部に命中した。するとワイルドボアは、そのまま「ブゴォーッ!」と悲鳴を上げて倒れる。そして、光の粒子となって消えていった。


「おや? 一発で倒せたぞ?」


 普通に投石した場合、ワイルドボアを倒すには投石を2回必要とした。一発では倒せなかったのだ。それが、なぜかツーシームで投げると一発で倒せた。


「変化球の方が威力が上がるのか? そんな馬鹿な……」


 理論上は、変化球を投げると球速が落ちるので、威力も落ちると考えるのが自然だ。今回は、たまたまの出来事かもしれない。そう思うことにしたのだが。


 その後、またワイルドボアと遭遇する。今回は普通に投石してみる。やはり一発では倒れないので二発目でとどめを刺す。


 それから、また別のワイルボアと遭遇。今度は、ツーシームで投げてみる。すると一発で倒れた。


「やはり、ツーシームで投げた方が威力は上がっているようだな……」


 その後も、検証するが。ツーシームで投石した場合、ワイルドボアを一撃で倒せるのは間違いないようだった。そうと決まれば使わない手はない。それからは、ツーシームをフル活用してワイルドボアを倒すようにした。



 それから、一週間がたった―――


「やった! やっと森を抜けたぞ!」


 森をようやく抜けると、どこまでも広がる草原が見えた。薄暗い森を抜けて、一気に爽やかな風が吹いている。草原は波のように風に揺れていた。


「ん? あれは…… 煙か!?」


 遠くに煙が上がっているのが見えた。煙が上がっているということは、誰かが火を焚いているのかもしれない。つまり、民家や集落があるかもしれないということだ。


「よし! 行ってみよう!」


 期待に胸を膨らませて歩き出す。何しろ異世界に転生して約10日。ずっと森の中を歩き。人間に出会ってすらいない。会うのはワイルドボアだけだった。


 第一村人発見なるか? 煙の上がっている方向を目指して、俺は意気揚々と進むのだった。



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