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75話

 これをユリアーネは即座に否定する。


「いえ、ちょくちょくアニーさんの家に泊まっていたことはありますが、一緒に住んでいるわけでは……自分の家もありますし」


 そりゃそーだ、とカッチャも理解はしている。猪突猛進に突っ走るのはアニーの長所であり、短所でもあるが、今回は短所のほうのようだ。実際、困っている人がいる。


「なーにをバカなこと言っちゃってるかね、コイツは」


 随時送られてくるメッセージ。その画面を軽くデコピンで弾きながら、ため息をつき、そして立ち上がる。なんであたしがこんなことを。


 ユリアーネがゆっくりと顔を上げる。


「……どう、するんですか?」


 上目遣いに問うと、カッチャから携帯を返される。少し、軽くなった気がする。


 カッチャは自身の携帯を持ち、画面をタップ。素早く操作し、なにか打ち込む。


「あたしから言って、やめさせるよ。全く、しょーもな」


 一度画面を消し、自室の外へ向かう。


 その背中に向けて、ユリアーネが声をかけた。


「……待ってください、もしかしたら、私がなにかアニーさんに失礼なことを——」


「いやいや。あいつが勝手になにか勘違いして、ユリアーネが離れていくとでも思っちゃってるっしょ。気にしない気にしない」


 即座に否定し、カッチャはユリアーネを気遣う。どうせあいつのことだから、ロクに確認もせずに突っ走ってるだけ。ある程度一緒にやってきたから、だいたいの人物像はわかる。ユリアーネは心配しすぎる自己嫌悪型。髪をかきあげる。


「ガツンと言ってやればあいつも——」


「であれば、私から伝えます。電話をかけます」


 一度瞑想し、気を整えてからユリアーネは携帯を操作する。電話帳を開き、選択するだけ。少しだけ、手が震える。


 その揺らぎを、カッチャは見逃さない。


「……いや、あたしからかける。あんたはそのままで。とりあえず、今日のところはそのベッドで寝てな。そんで、体を休める。いいね?」


 場を仕切り、順序を決める。多少強引だが、この二人はこれくらい荒療治しないと、なかなか歩調が合わない。音頭をとるのは年上の仕事。


 無関係なカッチャに、これ以上迷惑はかけられない。そんな意味も込めユリアーネは「しかし……」と遮ろうとしたが、仁王立ちで見下ろすカッチャの無言の圧に屈する。


「……わかりました。ありがとう、ございます」


 感謝。しきれない。と同時に、なんでこんなことに? と、疑問が再燃。少し、余裕が出てきた。

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