63話
そしてあっという間に放課後。アニーにとって、楽しみにしていたバイトの時間。店長として働くカフェ『ヴァルト』での労働の喜び。
「それで、色んな店まわってきたの? なにか収穫とかはあった?」
そのバックヤードでは、実質的な店長業務を行うダーシャ・ガルトナーが、店の制服に着替えた二人に問いかける。昨日はアニーを休ませて、一緒に他店舗への見学に行ってきたという。学びがあったのか、聞いてみた。
それはもちろん、と自信満々なアニーが胸を張る。
「ふっふっふ……やはり紅茶は美味しかったです。紅茶・イズ・ベスト!」
「なにもないのね。ユリアーネさんは?」
サラッと受け流し、ダーシャはユリアーネにも話を振る。本命はこっち。アニーはこんなものだと思っていた。
言葉を選び、悩みつつもユリアーネは提案をする。
「この店で可能なのかはわかりませんが……ひとつ、試してみたいことが」
と、歯切れ悪く答えたかと思うと、呆けたアニーに真っ直ぐ向く。
「?」
視線を逸らさないユリアーネに、「な、なんスか……恥ずかしいっス……!」と照れながらアニーが先に目を逸らす。
気にせずユリアーネは話を続ける。
「そのために、アニーさんにも、ひと肌脱いでもらいます」
や、やっぱり恥ずかしいっス……! とアニーが照れる姿を見て、ダーシャは自分の仕事に戻ろうかと考えた。
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