表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
エスプレッソとコーラ。
62/319

62話

 どんだけハイスペックなんスか……と、説明を受けたアニーは愕然とする。ひとつしか年齢が変わらないのに、とても大人びて見え、いつも学校のあとのバイトのことしか考えない自分とは大違い……。


「はー……すごい方っス……!」


 あまりいい語彙が見つからなかったので、とりあえず『すごい』でまとめる。


 さっきまで寝る一歩手前だったユリアーネだが、今は覚醒し、キラキラとしたオーラまで感じる。


「私もお話できたのは初めてです。とても気さくな方です……今日は一日、いいことがありそうですね!」


 ねぇ!? と、アニーのほうに力強く振り返る。


 気持ちはわからないでもないが、変わりようにアニーは苦笑いを浮かべる。


「ユリアーネさんがここまでテンション上がってるの、初めて見るかもです……でも、あの方……」


 少しだけ、ほんの少しだけ感じた違和感。香り。


 その儚げなアニーの表情に、すっかり元気になったユリアーネは疑問を投げる。


「? なんかありましたか?」


 惚けている、というのとは違う、悩ましい顔つき。曇らせているものはなんなのだろう。


 確実な自信は持てないが、なんとなく、アニーの嗅覚が黄色信号を告げる。


「嘘、ついてるっス。なにかはわからないですけど。よくない香りがしました」


 アニエルカ・スピラ。かつて太古の人々が持っていたといわれる、現代ではほぼ全ての人類には退化してしまった、鋭敏な嗅覚を持つ。相手の嘘や感情すら読むほどに。その鼻が、シシー・リーフェンシュタールは我々を欺いている、という判断を下した。なにかはわからない。


 アニーの嗅覚を知っているが、そんなこと、とユリアーネは呆れて歩き出す。


「人間ですから、なにかしらストレスの溜まることもあるはずです。もしかしたら、赤信号を渡ってしまった、とかにすら、罪悪感を感じる方なのかもしれません」


 たったひと言、言葉を交わしただけだが、信者のようにシシーを崇める。それほどまでに神々しく、眩い存在だった。


「……そういうのとはまた違うんスけど……まぁ、いいか。ユリアーネさんも眉目秀麗っスよ」


 切り替えて、アニーは先を行くユリアーネの横に並ぶ。嘘ではない。ベクトルが違うだけで、アニーには同列だ。


 ツーンとしつつも、笑みを浮かべて自分を取り戻す。アニーが褒めてくれるのなら、ユリアーネもまんざらではない。


「それはありがとうございます」


「本当っス。本当に本当」


 そんな他愛のない会話を繰り返し、学院への道を歩む。

お読みいただきありがとうございます!楽しかったよ、という方は、星やブックマーク、コメントなどをいただけますと、きっと今日いいことあります!(ないかもしれません)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ