表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
エスプレッソとコーラ。
59/319

59話

「これは……炭酸水と、なんですか? この黒っぽい、けどコーラのような、そうじゃないような液体は……」


 コーラを使うと言っていたので、ならばコーラなのだろうが、クリアボトルに入れている点がユリアーネは気になる。そしてそのボトルにはレモンが一緒。これはもしかして——


「こちらは『クラフトコーラ』、いわゆる手作りコーラですね。まぁ明確な定義がないので、コーラっぽいもの、ってところです」


 アニーが解説をいれる。言葉通り、何を入れたらクラフトコーラになるのか、という決まりがない。クラフト、つまり手作りのコーラであれば、全てクラフトコーラなのだ。


 なるほど、と納得するユリアーネだが、気になる点はもうひとつ。


「それはわかりましたが……紅茶は……」


 そう、アニーといえば紅茶。しかし、この材料は明らかにクラフトコーラ。


 ふふん、とアニーが自慢げに蓋を開ける。


「もうすでにこの中に仕込んであります。作り方は、レモン・シナモン・クローブ・ショウガ・カルダモン・バニラビーンズ、さらに水と砂糖を混ぜて煮詰めるだけです。砂糖はお好みで、てんさい糖や黒糖に変えるのもいいっスね。ボクはあえてココナッツシュガー」


 ほのかに薬味のある香りが放たれる。すでに作ってしまってあるので、解説は簡単に。


「中火で加熱し、沸騰したら弱火で一〇分ほど煮込みます。別の鍋でもうひとつ、水と砂糖、そしてボクがオススメするのは、デンマーク王室御用達の紅茶『クイーンズブレンド』。これをカラメルティーとして、加熱して煮詰めたものを、先ほどのものと合わせて、さらに弱火で加熱」


 炭酸水を開け、準備を進めながらアニーは解説を続ける。とはいえ、クラフトコーラは煮詰める以外に特にやることはないので、非常に簡素な文を添えるだけだ。


「火を消し、そのまま蓋をして半日。常温で粗熱を取った後、濾して昨晩から冷蔵庫で冷やしていたわけです」


 そして今に至る。


 ユリアーネはアゴに手を当てて、昨日からの不自然さに納得。朝、この家を出る前の香り、そして帰ってきてからのアニーの行動。


「なるほど……だから昨日は私が部屋に上がるまでに、少し時間がかかったわけですね。これを急いで冷蔵庫に入れるために」


 昨晩、一緒に帰宅した後、五分ほど外で待たされたことを思い出した。別に秘密にするほどでもないのだから、言ってくれればいいのに、と少し不貞腐れる。が、自分を驚かせたいというアニーの想いは受け止める。


 へへへ、とアニーは照れ笑いをする。

 

「その通りっス。それらを密閉できる容器に詰めれば、コーラシロップの完成です。これを炭酸水で適当に割れば、『クラフトコーラティー』になります」


 コップにシロップと常温の炭酸水多めに注ぐアニーは、少しドキドキする。炭酸水ではなく、熱湯で割ればホットクラフトコーラになる。朝イチなので、少し温く作る。

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ