57話
「一応、二〇世紀の終わり頃に、実際に販売されていた味ですからね。まぁ……あまり定着はしませんでしたが、それでも一部では好評だったようですよ」
ユリアーネの言う通り、かつて販売されていた時期がある。アメリカなどではレモンやチェリーなど、様々なフレーバーのついたコーラが盛んであるし、研究自体は兼ねてからされているものである。
残った缶のコーラを飲みながら、アニーは悔しそうな顔をする。
「コーラですか……侮れないっス……!」
もっと深く可能性を信じていればよかった、そんな表情だ。そして、そのお返しにとユリアーネに宣言する。
「ちなみになんですけど、ボクもユリアーネさんに飲んでもらいたいものがあります」
「? 私はもういただいてますけど……今ですか?」
いつも泊めてもらっているユリアーネからしたら、もうすでに充分すぎるほどにお世話になっているが、まだなにかあるのだろうか。すでに紅茶を飲んで、なおかつもう少ししたら学校へ向かう。
アニーが含みのある笑い方をする。
「明日の朝です。秘密なので、見ないでほしいっス! 寝てる間に作ってました」
いやー、と大慌てで台所に向かう。時刻はいつの間にか七時を過ぎている。今から作るものは、丸一日かかるため、今やらないと明日の朝には飲めない。ゆえに、大急ぎで準備をする。
「全く……忙しい人ですね」
厳しい言葉をユリアーネは発するが、喜びのオーラが溢れている。予想がつかないのはアニーのいいところ。きっと明日の朝も幸せな気持ちでいるのだろう。だがしかし、つまりそれは——
「てことは……今日も泊まり、ですか……」
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