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14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ユリアーネ・クロイツァー
45/319

45話

 スタッフ、というダーシャの解答もすごくわかるが、ユリアーネはひとつ選ぶとしたら、と熟考し、結論を出す。


「……私にとっては、やはり種は『お客様』でしょうか。でも……それはつまり利益なわけで、果実となにが違うのでしょうか」


 しかし、その結論に満足がいかない。


「小さい子供だったり、お年寄りだったらまた接し方は変わるでしょ? 利益とは違う。相手にとって、なにが一番なのかを常に考えることかな。もちろん、毎回正解できればいいけど、間違えたなら、それを次に生かすしかない。やっぱり答えはないよ」


 自論だけど、とダーシャは付け足す。ユリアーネがまだ色々と考え込んでいるのを察知し、そのまま続けた。


「そう言った意味では、アニーちゃんはお客さんによって、提供する紅茶の味を変えるよね。彼女の嗅覚にしかわからない世界だから、僕はなにも言えないんだけど、サービスとしては間違ってない。サービス業は形として残らないものだから、しっかりと心に残してもらう」


「心に…」


 なにか、閃いた気がする。そんな感覚にユリアーネは陥った。ところに。


「なになに? なんの話っスか?」


 と、トレーを持ったアニーがやってくる。面白そうな話には匂いがするのか、ちょうどいいところで乱入する。


 考え込むのがバカらしくなるくらいの笑顔をアニーからもらい、ユリアーネもつられて笑む。結局どんな顔をしていても、やらなければいけないことは変わらない。なら笑顔でいいだろう。


「アニーさんが素晴らしい接客だという話です」


 と、少しはぐらかして問いに答えた。間違ってはいない。


 吹っ切れたように見えるユリアーネを確認し、ダーシャ相槌を打つ。


「そういうこと」


「恥ずかしいっスねぇ。このヒゲ独身に言われると」

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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