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315話
「ん?」
目が合った隣の中年の男性がケーキを食べる手を止めた。いきなり少女が振り向いて声をかけてきたので、ケーキと少女。どっちを見ればいいのかわからず。
同様にアニーもフリーズ。とはいえ、いきなり顔を崩すのも失礼と悟り、より満面の笑みで。
「……なんでもないっス」
と返した。違うっス。ボクが想像してた人は。もっと可愛い人なんです。
窓の外を見る。人々が白い息を吐きながら歩いて行く。ドイツ。ベルリン。自身の故郷フリースラントから出てきて初めての冬。なんかこう、ほんの少し。いや、結構。それなりの比重で。今。物足りなさを感じる。




