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14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
307/319

307話

 譲っていただいたとはいえ、すでに自身の店。営業停止などになれば前オーナーのマティアス氏に顔向けができない。


 正直、給料はリディアにとってはいらないので、お手伝い程度でいいので置いておいてほしいところなのだが。


「で。スモーブローか。いいね、カラフルだし。見た目にも舌にも嬉しい限りだ」


 こういった会話に参加できることも楽しい。誰かと繋がれること。それが心の底から嬉しい。それが好きな人達なら尚更。


 賑やかで朗らかで煌びやかな弾けるレモンのような香り。アニーの嗅覚はこの場をそのように捉えた。


「そうっスよね。いやー、ずっとオリバーさんと考えたりしてたんスよ。北欧っぽいもの出したいですねって。そうして決まったのがスモーブローです」


 そうして携帯で検索して見せる。そこにはエビやタマゴ、トマトやタマネギなどを色とりどりに乗せたオープンサンド。そしてこれを推すには理由がある。


 スウェーデンなどの北欧では『ライ麦』を使った料理が多い。寒冷で土地が痩せているため、作物が育ちにくい。そんな中でもライ麦は育ちが良く、土壌も酸性アルカリ性問わず。栄養価や食物繊維量などが評価され、小麦よりも重宝されている場所も。


 これを使ったクネッケブロードという薄焼きパンは、保存食としても有用で野菜や魚介類を乗せてオープンサンドを作る。種子やナッツ、スパイスを混ぜるなど応用も効く。その中でもアニーといえばもちろん。


「このクネッケブロードに紅茶を混ぜるんスよ。ほんのーりと風味がして、これがまた美味しいんです。クラッカーみたいにして、好みのジャムなんかも。昔からある食べ方なんですけどね」


 主食でもあり間食でもある。店にぜひ。むしろ、今までスルーしてきたことを後悔し始めるほどに。

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