299話
「……はい」
ウルスラもモジモジしながらも同様に口に運ぶ。小さめにひと口。アイスに到達するまで。
ドキドキしながらアニーが二人を覗き込む。
「どうっスか? 結構自信あります」
作ったのもレシピを考えたのも自分ではないけども。合う紅茶の選別だけ。もしかしたらもっと合うものがあるかもしれない。無限に可能性があるのだから。
一般的にスリランカの紅茶は、産地にもよるが標高が高くなればなるほどにキレや渋みが増し、低くなればなるほどに優美な余韻がある。好みで変更させても面白い。
詳しくないウルスラとしては、ほんのりとそれぞれの風味が漂い、今までに味わったことのない組み合わせに驚きが隠せない。
「美味しい! どう、って言われてもなんて言ったらいいかわかんないけど……」
少しは食レポの勉強もしよう。そう決めた。次いつ使うか、することがあるのかも知らないけど。伝えたいことが上手く伝えられないのはやきもきする。
ひと呼吸待ってからカッチャが、おそらくこの子はこう言いたかったんだろうな、というのを予想して口にする。
「コーヒーの香ばしい香り、紅茶の華やかな甘さ、ショコラーデの深みのある苦味。上手いこと相乗効果で合わさってるわね。食感も……楽しい」
ほぼ自分の感想だけど。でも本心からそう。本来のガレットよりも、ブリオッシュ生地にすることによってしっとりとした食感。個人的にはサクッとしたのも食べてみたい気もする。なんにせよ、満足のいく逸品。
自慢げにビロルが事のあらましを口にする。
「だろ? まぁ、その知り合ったベルギー人とやらが用意してくれたショコラーデとか、レシピとかのおかげなんだけど」
「ベルギー?」
もぐもぐと咀嚼しながらカッチャが予想外の国名に反応。パリ、に行ったはず。予想外の人物に出会ったもんだ。




