297話
「コーヒーもロブスタ種をメインで使いますので、エスプレッソとしてやアフォガードなんかもいいかもしれません。色々作ってみようかと」
せっかくなので色々と展開してみよう、というのがオーナーでもあるユリアーネの策でもある。希少な豆ではあるが、スリランカのコーヒーというものを広めるにはちょうどいい機会でもある。美味しい、と知られれば注目されるかもしれない。未来を見据える。
色々と自分の知らないところで、そんなことが画策されていたとは。知らされていなかったカッチャとしては。悔しさもあると言えばある。
「ふーん、てかこれ、スリランカのテーブルウェアなの? 前から店にあった気もするけど」
そして二つの違うプレート。片方は以前から目にしていたもの。なにかある。考える。やっぱやめた。そういうキャラじゃない。
もちろんこれに答えるのはオリバー。嬉々として肺から声を生む。
「ふっふっふ、ナタリーのことですね? これはプータルフリというシリーズものなんです。個性的かつ心穏やかなデザイン。ボウルやマグなどもありますが、やはりこのブランドといえば——」
「スリランカじゃないじゃん。なんか意味あるの?」
ナタリーだかサラリーだかカッチャにはどうでもいいが、やはりここまでくるとなにか隠されている気がしてならない。わざわざ分ける意味。再度推理。やめた。
はにかみながらアニーがその意を伝える。〈ヴァルト〉においてそれぞれ大事な役割がある。その中でこの方であってほしい位置。
「……プータルフリの意味、っス。フィンランド語で『庭師』を意味するんスよ。ボク達を上手く扱ってくれるカッチャさんにピッタリかと思いまして」
好き勝手な方向に伸びていく草花。それを丁寧に、時に荒々しく取り扱ってくれる人物。彼女がいなければ、この店はまとまりのないものになっていたかもしれない。いや、きっとそう。




