表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
285/319

285話

 年上の怖そうなお姉さんに怒られながらも、いや、怒られているからこそ、少女にはより甘美さが足されているわけで。


「楽しいよ。人を陥れるのは。最高の瞬間だ。リアクションが可愛いとさらに楽しい」


「エスプレッソね。すぐ持ってくるわ」


 あまり関わりを持つのはよそう、と語気強くカッチャは断ち切って踵を返す。きっと背中に視線が突き刺さっているんだろうな、とは容易に想像できる。足取りが少しだけ早くなる。


 そしてキッチンの窓から睨みつけるように、


「エスプレッソ」


 と注文。出来るだけ苦めに。子供じゃ飲めないくらいに。そんな眼力。


「なんでキレてんの。というかオラ、クイーンズ・ガーター」


 コトッ、とビロルはカウンターに置く。コーヒーを使っているだけあって、深みのあるブラウンの液体。その上にクリームがプースカフェスタイルかのように、層を作る。


 フィンランドのブランド、イッタラの『トサイカ』というシリーズの、くびれた形の耐熱グラス。装飾の施されたメタルホルダーと、数字の8の字型の持ち手が印象的なデザイン。ティモ・サルパネヴァという男性デザイナーの逸品。オリバーが「ベリマッティ」と名付けていた。


 当然ながら氷などは使わない。ジッとその色や形を薄目で見つめたカッチャは、一気に飲み干そうとしたが、ホットのためやめておく。目を瞑り、ゆっくりと。落ち着け。なにを操られている。あんな子供に。


「……ふぅ……」


 しかし。なぜクイーンズ・ガーターを当てられたのだろうか。あれか、あの子はベルリンで話題の新進気鋭のマジシャンかなにかか。いや、そうに違いない。タネも仕掛けもわからないが、そういうことにしておく。マジックなんて、見破れるほど詳しいわけでもないし。


 些細な態度の違い。それなりに歴の長い者同士。ビロルにはなんとなく、先ほどまでとの空気感の違いがわかる。


「なんなんだよ。なにかあったのか?」


 言ってもものの数分。そんな機嫌が悪くなるようなことがあるかね、と不思議でしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ