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14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
284/319

284話

 他のお客達は、今まさにすぐ近くで、クイズ勝負が勝手に開催されていることに気づいてなどいない。あまりに自然。あまりに日常。あまりに正常。異常なのは。少女の鋭さ。


 まさに。頭の中を支配していたカクテル。それを当てられたカッチャ。なに、ごと……? 


「どういうこと? なんなの?」


 このカクテルは、先ほど本当にたまたま思いついただけ。自分に飲まれるために、現在進行形で作られている状態の酒なわけで。なにをしたって、他人からふと出てくるようなものじゃない。それ、なのに……。


 タネも仕掛けもない、とばかりに少女は両手を上げて見せた。


「ただのゲームさ。あなたのここにたどり着くまでの歩き方、年齢、表情、反応。そんなところから読み取った、僕なりの遊びだよ。間違ってても問題ない。遊ぶことが目的だから」


 なので、実際にはそこまで飲みたいわけでもない。出されたら飲むけど。すでにこのクイズへの興味は失った。


 意味、がわからない。わからないが、ひとまずここから離れようとカッチャは投げやりに了承。頭は真っ白。


「……クイーンズ・ガーター、ね。ちょっと待ってて——」


「ダメじゃないか。僕はまだ未成年だよ。保護者もいないでひとりで来てるんだから。青少年保護法の第九条に違反するんじゃない? それはお姉さんに奢るよ。僕はエスプレッソで」


 クスクスと声を殺して少女は笑う。困らせてしまったお詫び。やはり街にくりだすと面白い、に出会う。


 エンダイブを噛んだ時のような、苦味をカッチャは顔で表現。深呼吸しても色々と。色々と癪に障る子供への静かで低温の怒りの炎が燃え上がる。


「……なーんかムカつくわね。からかって楽しい?」


 柔らかく撫でるように神経を逆撫でしてくるというか。声を荒げるほどでもないんだけど、冷静さを失わせるような。そんな口調で。ピリッとしてくる。

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