278話
まぁ、そういう反応になるよねと予想通りのバーテンダー。様々なボトルやらグラスやらを用意し、カウンターに置く。
「ロングアイランド・アイスティーは、アイスティーと言っているけどかなりアルコール度数の高いお酒だからね。ウォッカやラムなんかを使ったりするもので、強い人でも全然酔う」
別名『レディキラー』。かくいう自分も一度飲んだことがあるだけで、味に自信はない。だけどここは専門的なバーではない。そのへんはご愛嬌。味にこだわるなら本格的なところに行ってくれ。
もちろんカッチャも飲んだことはない。たまたま頭に舞い降りてきただけ。そしてそんなアルコール強めなもの、人の奢りでなくては選択肢にはない。
「紅茶の茶葉とかは入っていなくて、それ以外のものでアイスティーを表現したお酒、ってところかな。見た目も」
ネットで調べた知識。もしなにも言わずに出されたら口をつけてしまうだろう。そして含んだ瞬間に吐き出す、かも。ウォッカとか飲んだことないし。ロシア人用みたいなもんでしょ、あれ。ロシアじゃ産湯もウォッカ、とか聞いたことある。冗談だろうけど。
その情報量にアリアデリアも感心しきり。意外な一面を見た。
「はー。よく知ってんねぇ。カフェ店員てみんなそうなの?」
褒められているのだろうが、カッチャには複雑。いらんことに脳の容量が割かれている。
「……いや、ウチは特別……」
たぶん。アニーのせいで。あいつが「こんなんもあるっス」とか教えてくるから。もはや『紅茶っぽいもの』ならなんでもござれな感じ。
とりあえず作ってみるバーテンダー。飲めなかったら自分が飲む。
「面白いカクテル、と言われてそれが出てくるあたり、将来が想像できるね」
事情は知らないけど。きっとあと数年もしたら、水のような感覚で飲む子になるのだろう、と予想。
「……」
そんな空気を悟ったカッチャは、なんかもう面倒なので適当にお任せすることにした。




