表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14 Glück 【フィアツェーン グリュック】  作者: じゅん
ビリヤードとダーツ。
269/319

269話

 アニエルカ・スピラ。通称アニー。同じケーニギンクローネ女学院に通う同級生。そしてこの店の店長というポジション。紅茶推し。推しというより人生。隙を見せるとお湯を沸かして茶葉の準備をしている。元気いっぱいで、静かな森は彼女の希望であるにも関わらず、お客との会話を率先してこなす。


 ドイツはフリースラント出身。世界でも有数、ひとり当たりの紅茶の消費が多い地域。そこで生まれ育ったのだから仕方ない。様々な種類の茶葉が店にストックしてある。それはもちろん店で提供するためのものでもあるが、自分の休憩のためでもある。


「トラブルも増えるけどね。たぶん数日もすると『あぁ、いない時のほうが落ち着いてたな』と思うようになるんだろうねぇ」


 しみじみとビロルは数日前を思い返す。というのも一週間ほどアニーはパリへ行っていたため不在だった。そして今は戻ってきていて、今までのように無邪気に振る舞っている。お茶菓子が注文で入れば、自分用にそれに合う紅茶を選別し、勝手に食べながら飲む。


 それが当たり前になっていたため、注文が入ったらひとつ多めに作ることが多々ある。そしてそのタイミングも掴めてきた。「そろそろだろうな」と勘が告げる。が、告げていない時に食べられることももちろんある。


 その日常から解放された一週間だった。最初は天井を見つめながら「あぁ、そのまま注文を受けた通りでいいんだ」なんて感動しながら思考を放棄して作業できた喜びが勝っていたが、一日経つごとに物足りなさを感じるように。なので多めに作って自分で食べてみたり。


 漫画なんかで、正義の味方として悪を滅ぼしたキャラが平和で退屈な日常に飽きてきて、本来の自身の性質である悪行に走る、なんてことがたまにあるが、あんな感じなんだろうか。多めに作るのは悪行か? まぁ、いいことだとは思わないけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ