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260話

 それは初めて買った時もアニーは同様のことを考えた。そのことを思い出す。


「ちょっと色合いは違うっスけどね。でもボクはこっちのほうが柔らかくて好きです」


 缶の色は国旗に比べて淡い色。ひっそりと大統領が色合いを変更したりする時があるので、いつかは似た色になるのかもしれない。


 三種類あるとそれぞれ気分で楽しめそう。今の気分は赤。早速ユリアーネがキッチンへ向かおうとする。


「ありがとうございます。それじゃあ、お湯を沸かしましょうか。どんな味なのか気に——」


「ちょっとストップっス。実は今日は飲む以外の方法を試したいんですよ」


 そこでアニーが示したのは、机の上にもうひとつある紙の箱。これが今回の目玉。シシーと離れて買いに行ってきたもの。雑貨屋で見つけた。


 いつもなら真っ先に飲みに走るはずなのに。そんな驚きを携えつつ、この先の展開をユリアーネは想像できない。


「飲む……以外、ですか?」


 そのまま食べたり? 紅茶味の、というものはたくさんあるので、そういった使い方? とすると、このもうひとつの箱の中身はなんだろうか。


 しかし今回アニーが選んだものは、お互いの需要を満たすもの。紅茶は無限に楽しませてくれる。


「香水とかアロマは好きだけど、ボクのことを考えて使わないユリアーネさん。紅茶の味も香りも好きなボク。お互いにメリットのある方法です」


 もらったコサージュのお返し。それについて悩むことはなかった。身につけるものをもらったから、自分は置いておけるものを。茶葉を買ってもらえたのは偶然だけど、費用が浮いて助かった。そのぶんはまた違う茶葉を買って経済を回そう。


 もうユリアーネは考えることをやめた。純粋に驚くことだけに集中する。


「……楽しみです。こちらの箱を開けてもいいですか?」


 許可を得、そして開ける。少しドキドキ。ちょっとオシャレな木の箱。重さのあるもの。


 心臓の鼓動までシンクロするのか、アニーも緊張感が伝わってくる。


「可愛いっスよね。見たことありますか?」


 そろりそろりと箱から出てくる様を見つめる。

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