259話
そして夜。仕事終わりのユリアーネが寮に戻ると、机の上に一式を用意していたアニーが出迎える。
「と、いうわけでご用意しました」
茶葉の代金を払ってくれたのはシシーだけど。あとでまたお礼を一緒に言いに行こう。そういえばコサージュはリディアが支払ったというし、自分達って全然お金使ってない、と今更感慨に耽る。
コートを急いで脱ぎ、室内を駆けるようにユリアーネは擦り寄る。期待はパンパンに膨らんでいる。
「楽しみに待ってました。お仕事中もずっと考えていたんですから、どんなものなんだろうって」
どんな時も予想を上回ってきてくれる。信用、というよりも信頼。だから、きっと今よりもっと笑顔にしてくれることはわかっている。もう喜ぶ準備はできている。
もったいぶることもなくアニーは机の上の黒い箱から。
「ではまず茶葉。こちらになります。コンパニー・コロニアルの詰め合わせセットです」
ささっ、と身を引いてユリアーネに開けてもらう。とはいっても箱の蓋を持ち上げるだけだが。そしてそこから出てきたもの。ひとつずつ説明していく。
青。緑茶の一種である煎茶と、中国の一部地域でのみ栽培されているチュンミーを柑橘や香辛料、チョコレートなどで風味付けした、オリジナルブレンド。花と赤い果実が散りばめられたオレンジ・スパイス・グリーンティー。
白。紅茶よりも発酵が浅いことで透明感のある白茶と、繊細でフルーティーな味わいの緑茶をブレンドしたホワイト・グリーンティー。白い花びらを散りばめたこの茶葉は、雪山の美しさを表現している。
赤。アーモンド・チェリー・ブラックティー。マリー・アントワネットにも愛されたコーンフラワーの花びらが特徴的。チェリーとアーモンドのフレーバー。
「……まるでフランスの国旗みたいですね。それぞれが『自由』『平等』『博愛』を表現しているみたいで」
その配色にユリアーネは気づくところがあった。フランス革命当時、創設されたばかりの市民軍の標章の赤青と、革命軍の帽章の白を足したトリコロール。それに似ている。ちなみに『自由』『平等』『博愛』は国の標語であって、三色とは関係ないとする声もある。




