250話
褒められると些細なことでも嬉しい。ビロルやカッチャから受けるものとは、アニーには違う気がする。あっちはどこか棒読みに感じて。
「そこでシシーさんにとってのその方に、どんなものが似合う茶葉かを選定します。それから買うと」
なので、ブランドが多ければ多いほど選択肢が増える。種類も在庫もいっぱい。それが一箇所に集中しているならそれに越したことはない。
解しつつもシシーはやはり思うところがある。まだなにかある。一応予想は立ててみる。
「ユリアーネさんだね。彼女のために買いたいものがある、という感じだ」
相手のためだけで選ぶような子ではない気がする。自分にとってのメリット、それも誰か相手がいる。となると答えは明白。違ったら違ったでいい。
ニヒッと笑って誤魔化すアニー。やはり鋭い。
「バレバレでしたか。なので、ボクも少し見たいものがあるっス。それと贈りたい方の部屋に、とあるものがあるか聞いておきたいんスけど……」
今回のキモになる部分。紅茶は紅茶でも『香り』を楽しむとなると。もしないなら購入しなくてはならないわけで。
妙に改まった態度に驚きつつも、シシーはその真意を問う。
「? なんだい? だいたい覚えているから言ってもらえれば」
彼女のことならなんでも。部屋の物の配置から好みまで。それ以上のことも。あっけらかんと。
覚えている。そこまで深い関係なのか、それともその記憶力がすごいのかどう反応していいか悩むアニーだが、意を決してひとまず聞いてみる。
「実は——」
色々と形はあるけれども。物の役割は基本的に同じ。アロマなどが趣味であれば持っていてもおかしくはない。
ソレを記憶の中から漁るシシー。するとテーブルの上に似たようなものがあった。素材。いや、間違いない。ソレだ。
「あぁ、たしかにあったね。そういうものもあるのか。やはり紅茶とは奥が深いね」
そうやって使うものだったのかと素直に感心。部屋で自分といる時は使っていなかった。リラックスは必要ない、と悟っていたのかもしれない。




