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249話

 それにしても、街行く人々の歩くスピードが速い。まったりと歩くことを楽しみたいアニーにとっては、それでいいのかと問いただしたいほどに。ゆっくり。ゆっくりいきましょうよ。そんなことを、目の前を通り過ぎる人々に心の中で諭してみる。


 そして数分後。学校終わりのままのシシーが到着する。


「悪かったね、待たせて。さて、入ろうか」


 同様に建物を上まで見通す。歴史を感じる。それもそのはず、ここはパリで最古のデパート。この街の成長をずっと見守ってきたシンボルでもあるのだから。


 それを背に、設計者でもあるかのようにアニーは自慢する。


「はいっス。お伝えしていた通り、ここがボクのオススメっス。きっと満足してもらえるかと」


 入念にリサーチしていた。のはここに来る前から。パリに来たら行ってみたい観光地として個人的にピックアップ済み。それがこのたび叶ったわけで。


 しかし不思議そうに広告を見つめるシシー。予想とは少し違うようで顎に手を当てる。


「デパートでいいのかい? てっきり色々なところを歩いて回るかと思っていたのだが」


 こういうところを否定するつもりはないが、紅茶においてブランドはブランドでそれぞれ店を持っているし、そのほうがより詳しい店員もいるような気がする、という印象から聞いてみた。デパートは様々なブランドのものをまとめて一店舗が売っている、ただの先入観だけども。


 もちろんアニーとしては考えがあってのこと。調べていくうちにここが最適だと確信に至った。


「実は、様々な紅茶ブランドがそれぞれ出店してるフロアがあるんです。紅茶以外にもスイーツやワインなどなど。そこであれば、色々試せますから」


 イギリスと同様に紅茶文化が深く根付いている国だからこそ。こうして観光客の土産探しがしやすいように、その他のフランスらしい飲食関係をまとめてあるところが多い。


 そこまではシシーも流石に知らなかった。広いパリをまわらなくてもここで全て済ませることができそう。


「さすが、紅茶のこととなると抜け目がないね」

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