244話
「一緒にお買い物……ですか?」
どうやったらその流れで。そんな言葉を飲み込んだユリアーネは考え込んだ。というのも、少し甘美な雰囲気の話をアニーが楽しそうに話すので。変なところにでもその後連れて行かれたのかと思った。
二人は学校終わりにパリの街並みを歩く。ベルリンとは少し違う、石造りのアパルトマン。七階建てが多く、ベランダは三階と五階のみ、という細かなルールがあり、電柱も存在しない。なによりも見栄えを大事にした結果の産物。
白を基調とした美しい景観。それを維持するために、この街では高さや屋根の傾斜まできっちりとした規格がある。石畳というものは歴史を感じる風情もあるが、修繕も簡単なので一石二鳥。周りと一体化した自然な調和がパリの街を彩っている。
六区。サンジェルマン大通り。活気に溢れつつも、どこか洗練された落ち着きも感じる人気の観光地。映画館や古書店など、いわゆる『知的中心地』とされ多くの二〇世紀の作家や芸術家、哲学者達が、こぞってこの地区のカフェで意見を交わした。
そんな歴史を感じながらも、昨日のことについてアニーは誇らしげに語る。
「はい。なんでも、ルームシェアされている方へのお土産を選んでほしいそうで。行ってきます」
任されたからには、その顔も知らぬルームメイトの方に喜んでもらわねば。ドイツではシェアは学生にとってはかなり一般的。安い宿などだと、見知らぬ観光客と二段ベッドを分け合うことも日常茶飯事なのだ。
むむっ、と眉間に皺を寄せるユリアーネ。お土産。たしかに今回は迷惑をかけてしまった人達がいる。
「そうですか……私もシフトに入っていなければ〈ヴァルト〉の皆さんへ買いたかったのですが……」
お店の方々。特にウルスラは入ったばかりなのに。少し人見知りするタイプだった。上手くやれているのだろうか。カッチャさんは上手くフォローしてくれているだろうか。




