232話
言われてユリアーネはチラッとベアトリスを確認する。が、我関せず、といった様子でツーンと無表情な様子。
「えっと……たしかにアニーさんぽさもありますね。形も素敵です。これはなんという花ですか?」
いいの……かな? と話を振ってみる。もう一度確認。返ってきたら買っていいということなのだろう。売り物ではないと言われている以上、無理やり自分は買うようなことはしたくない。
しかし特に気にせずベアトリスは詳しい説明を挟む。
「エンゼルランプ。花言葉は『あなたを守りたい』だ。贈り物としてはいいかもしれんな」
この花は短日植物。開花の条件として日照時間の短さがあり、例えばそれが蛍光灯であったとしても長いと満たすことができない。逆に言えば、日照時間をコントロールできれば一年中咲かせることができるという特徴を持つ。
ふむふむ、と大袈裟に聞き入れるリディア。見入るユリアーネの肩を叩く。
「いいんじゃない? アニーにはこっちで、ユリアーネはこっちの白いものを」
そしてその横に鎮座していた、お揃いで色違いのものを勧めてみる。もうこうなれば何個でもいっちゃえ。彼女に遠慮という言葉はない。
「……」
その状況をまたもなにも言わずにベアトリスは、複雑な色の目で見つめる。二人の少女を交互に確認しながら。
オレンジ色と白。なんだか縁起が良さそう。ユリアーネはお互いにつけた絵を想像してみる。
「……素敵、ですね。一緒に、こんな風に……」
はにかみながら髪へ。鏡がないので確認できないが、できれば。似合っていてほしい。
「私が払うからさ。ぜひプレゼントしなよ。いいよね」
と、勢いよくリディアは確認を取る。こんなに気に入ってるんだからダメとは言わせないけど。
場合によっては、と先に伝えておいた。ゆえに、本来なら断る権利を有するベアトリス。総合的に判断。ダメ、と言うべきなのかもしれない。だが。
「……かまわん」
そのリディアの余裕のある目。口元。それが気になり、販売を許可する。してしまう。
「でも——」
「だから私が買うんだよ。食事代はかかってないんだからさ。それくらい安い安い」
とはいえ、なんだか申し訳ない気持ちはユリアーネの中に渦巻いている。いっそ、断られたほうが楽だったかもしれない。その気持ちを汲み取り、遮るようにリディアは言葉を重ねた。




