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184話

 が、それを制止し、ユリアーネが、本当の名前を伝えた。


「ですが、これは少し違って『チャム』と呼ばれるマレーシアのコーヒーになります」


 手を止めるララ。視線を合わせる。


「え? 違うの?」


 ちょっと恥ずかしくなった。知ったかぶってしまったかも、でも混ぜ合わせたものはユンヨンチャーだったはず。どう違う?


 優しく違いを説き伏せるユリアーネは、ようやく心拍数が元に戻ってきた。


「違うと言えば違いますし、同じと言えば同じです。店によって味が全然違いますし、かなり甘いものもあれば、苦味が際立つものも。どれもチャムですし、国が変わればユンヨンチャーです」


 マレーシアではあっさりしたチャムもあれば、コクや酸味が際立つチャムもある。さらにスパイスを効かせたり、レモンやタピオカなどを入れる店もある。かなり自由度の高い飲み物なのだ。


「……複雑なのね。いただくわ」


 時間を置いて少し温度を下げたチャム。これもこの店のチャムになる。正解も不正解もない味をララは楽しむ。


 味よりも、誰と飲むか。どんな風に、どんな場所で飲むかが大事になることもある。その人にとっての最高の一杯をユリアーネは目指す。


「複雑です。人間のように」


 その言葉を受けたララは、ひと呼吸置いてから飲む。


「……キリっとした苦味と、茶葉の爽やかな香り。たしかに、いいところを取った味かもしれない。美味しい……! ミルクが入っているの?」


 ほんの少しだけ、優しい。そしてミルクにしてはより濃厚な後味な気もする。不思議な味わいだ。


 そのタネをユリアーネが明かす。コーヒーでは使われることはほぼないもの。


「はい、本来であれば練乳を入れてコクのある甘さを出すのですが、エバミルクを入れて少しあっさりと仕上げました。カロリー制限などもされているかもしれませんから」


 エバミルク。つまり無糖練乳。ミルクを数倍に濃縮した乳製品。もし練乳であれば、さらにあとに引く甘さにすることも。本場のチャムはかなり甘い店が多いが、エバミルクを使っているところはあまりないのだ。


 謎が解けて安心したララは一気に飲み干す。無糖という言葉に弱い。


「たしかにこれなら何杯でもいけちゃうから、練乳だと体型維持が難しくなるわね。とはいっても三杯も四杯も飲んだら同じだけど」


 とはいえカロリーがないわけではもちろんない。飲み過ぎては意味がないので、注意しなければならない。

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