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179話

 語を続けるユリアーネ。強く、その言葉を深く読み取った結果。

 

「悩んでいるようでしたので、おそらく味よりも、意味を持たせることのほうが重要かと」


「というと?」


 コルタードも個人的には今一番合っていたものの気がしているララ。より追求する。


 自分の力は、自分がよく知っている。とすると、力を借りるしかユリアーネにはできることがない。


「強くなりたい、ということは悩みがあるということですよね。私にはその悩みを解決できるような言葉は持っていませんから。だから、エスプレッソや薔薇にお願いしたんです」


  もしもアニーやシシーだったら、しっかりと自分の想いを、使えるもの全てを使って伝えるのだろう。だけど、自分は自分なりのやり方で。コーヒーとラテアートくらいしか。だが、今はそれでいい。反省は家に帰ってシャワーを浴びてベッドで横になった時に。


 とすると、エスプレッソや薔薇は、ララにとってキューピットや妖精になる。本人からしたら少し可笑しい。


「なんか詩人みたいね。可愛い」


「あ、ありがとうございます……」


 見つめられて感謝されると、耐性のないユリアーネには刺激が強い。


 舌に残った味わいを反芻して確かめるララ。これはこれでわかることもある。


「それに……うん、言われてみると、ほんの少し甘くて、やっぱり苦くて。人生ってそんなもんなのかな。うまくいかないね」


 強くあること。生きていれば色々ある。そんな時に飲みたい味。少なくとも、自身にはほんのりした甘さが必要だったのだと、そこで認識した。


 ウェイトレスであれば、提供して終わりなのだが、なんとなく殻を破るのであれば今だと強く決意しているユリアーネは、さらに一歩踏み込んでみる。


「もしよければ、お話しできる範囲でかまいませんので、教えていただけませんか?」


 自分は正しかったのか。その確認も兼ねて。


 相談に乗ってもらえるカフェなんて聞いたことないが、なんとなくララはこの子になら、と乗り気になる。どんなアドバイスをくれるのか。


「女の悩みなんて、だいたい恋愛の話じゃない?」


「……人によると思いますが」


 聞かなければよかったかも、そんな後悔がユリアーネに生まれ始める。恋愛についてなど、答えることはできない。耳が赤くなるのがわかる。


 だが、そんな相手の反応もララは楽しむ。


「まぁ私の場合、中々相手が振り向いてくれない、ってことなんだけどね」


 どんなに愛情を込めても。見た目を整えても。尽くしても。彼女には届かない。彼女からは求められない。けど、それが燃えるのかもしれない。

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