表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/319

149話

 それはマクシミリアンも同様。かつて勝負の世界にいた頃にも感じた、ゾワっとする言葉に言い表せない感覚。まさか紅茶とクッキーで。


「うん、美味しいかというと微妙なんだけど、不味いわけでもない。わからなくて食べてしまう。不思議だわ」


 ここでアニーからひとつ解説が入る。


「クルトさんのほうはサルミアクです。塩味のラクリスですね。好き嫌いの分かれる味ではありますが、クッキーにすると面白いかと思ってやってみましたが、上手くいってよかったっス」


 いやぁ、やってみるもんスね、としみじみと感動。


 最後の一枚を食べようとしていたクルトは、齧ろうとしたところでハタと止まる。


「……ということは、初めて作ったんですか?」


 背中に冷や汗が流れたのがわかる。身震いも。珍しい組み合わせのお菓子だとは思ったが、まさかある程度の練習はしているものだと思っていた。


 ケロっとアニーは肯定する。


「そうです。成功したんで。結果オーライってことで」


 失敗していたら、まぁ、謝ればいいか、程度に考えていた。が、予想以上に好評で奇貨ということにしておこう。こういう博打は手に汗握って好きだ。


 しかし、こうなるとクルトは噛み付く。実験と受け取られてもおかしくはないため、気が気じゃない。瞬きが多くなる。


「なにをもって成功とするんですか? 少なくとも、『美味しい』という言葉は引き出せていないと思いますが?」


 それにはマクシミリアンも同意。肝心な部分が抜け落ちている。


「たしかに。面白かった。それは認めるけど、彼にとってどうプラスに働いたのか、聞きたいねぇ」


 最後の仕上げ。紅茶とお菓子がはたしてどういう意味を持つのか。なぜこれらを選んだのか。


 その答えを伝えようとしたアニーは、ポン、とウルスラの肩を叩く。


「それは……ウルスラさんから説明させてもらいます」


「……はい?」


 そして背中を押されてウルスラは一歩前に出た。視線が集まる。足の先に緊張の波が来る。


 背後からアニーが小さく呟く。


「ほら、あれっスよ、あれあれ」


「は、いや、あれ、え? 私? なに……が?」


 まず、どこから事態を把握すればいいのか。ウルスラは狼狽し、なにについて今話しているのかもわからなくなった。


 ポカン、としつつもクルトはとりあえず聞いてみることにした。


「……では、どういう意味でしょうか? ウルスラさん、ぜひ教えてください」


 いや、絶対わかっていないだろうけども。なんでか前に出ているため、とりあえず礼儀として。いや、わかってないだろうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ