表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/319

103話

「てことは、ユリアーネさんのディアンドルが見れるってことっスか!?」


 アニーの気づいてしまった事実に、「しまった」とユリアーネは冷や汗を流す。


「……場合によっては」


 混まなければ着なくていい。祈るのもおかしい話だが、できれば着たくない。


 しかし、アニーはもうその気になって、ひとりで盛り上がっている。明日も頑張れそうな気がする。


「行きましょう! 明日は休みっスよね!? 店長とテオさんにはボクから言っておくっス!」


 ユリアーネには休んでもらう、とダーシャに提案していたはずだが、事情が変わった。疲れ? それは働いて吹き飛ばせばいい。


 言ってしまった手前、とりあえず行くことは確定してしまった。ユリアーネは少し覚悟をする。


「……早く寝ましょう。明日は七時には出ますよ」


「はいっス! いやー、楽しみですねぇ」


 何色かなー? と、すでに着ることになっているアニーの脳内。今日の疲れはもうない。早く明日になれ。ポジティブなことしか考えられない。


 ふぅ、と息を吐き、焦りを見せるユリアーネだが、楽しみもある。


「……私も、アニーさんのディアンドル、楽しみです」


 聞こえないようにそっと呟く。心に留めておく。


「ふふふ」


 もうすでに想像する世界に飛び込んだアニーは、緩みきった顔の筋肉が戻らず、そのまま眠りにつく。


 †


 日曜日はドイツでは基本的に休日で、サービス業であってもそれは変わらない。しかし、カフェやレストランは開いているところも多々ある。観光客が多いこともあり、そういったところはうまく調整してあるのだ。

 

 都心部ではないが、食に関することはなんでも請け負うブッフは、日曜日も開いている。カフェでは、モーニングセットを用意しているところは多いが、そこも完備。朝は九時からやっている。

 

「いいところですね。とても落ち着きます。風が爽やかです」


 昨夜、アニーから聞いていた風車。そしてそこからの眺め。朝早く、吐く息も白い。少し肌寒いが、空気が澄んでいて気持ちいい。自分のアパートはどっちだろう、とユリアーネは遠くまで見渡す。


「ですよね。小旅行って感じがします。初めての旅行っス」


 ユリアーネと二人きりの、という修飾語はつけないでおくが、この場所が二回目のアニーも、昨日と違う朝の時間の眺めを楽しむ。


 しかしそこはユリアーネがしっかりと釘を刺す。


「旅行ではないですよ。アニーさんは仕事、私は必要があればお手伝い、というだけですから。気を抜かないでください」


 あくまで仕事、ということを強調する。そして、自分はディアンドルは着ない、と念じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ