表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/319

100話

そのままテオは続ける。


「そこで特殊な焙煎方法で、そのクロロゲン酸と、同じく胃を荒らすタンニンを大幅にカットしたコーヒー豆がこれ、『タイラーズコーヒー』」


 と、下の戸棚からテオは豆の入った袋を取り出す。大きな字で『オーガニックコーヒー』とあり、体に良さそうな文言。それを開ける。香りは普通のコーヒーと変わらない。


 アニーは近づいて、まじまじと袋を凝視する。


「……こんなものまであるんですね……ウチにはないです」


 ひょっとして店長とかも知らない? と少し優位に立った気がして嬉しい。帰ったら自慢しよう。


「アメリカ生まれで少しずつ浸透してきてるんだけどね、苦味がだいぶ抑えられているぶん、人を選ぶかも。とりあえず、あの人にはそれでいいか聞いてみるよ」


 そう言ってテオが袋を持って説明しにその男性の元へ。快諾してくれたようだ。

 

「ありがとうございます。いやぁ、一件落着っスね。よかったよかった」


 アニーもひと安心。胃痛が抑えられればいいなと、陰ながら男性を応援する。


 その後、引き続きホールを担当していると、いつの間にか時刻は一九時。仕事を終えたであろう人々が続々と入店してくる。


 それに比例して増えるビールの注文。コーヒーはほとんどなくなった。


「ビール増えてきましたね。初めてですけど……ホントにこんな飲むんですね……!」


 一応、ヴァルトにもアルコール類はあるが、あまり頼む人はいない。近くにビアホールもビアガーデンもある。飲むならそちらだからだ。しかしここは全てを兼ねる。意表を突かれる注文にも対応しなければならない。


「カフェだとあまり提供しないからね。二二時くらいには落ち着くから。それまで大丈夫そう? 夕食もそれからで」


 初日なのに、一気に働かせすぎかとテオは焦るが、アニーのほうはなんとか保てている。休憩もあまり取れずにいるが、なんとなくこの疲れが心地いい。少しハイになってきた。


「ありがとうございます。それからでいただきます」


 賄い付き。いつもはビロルか店長あたりのものばかりだったが、久々に他の人の味を確かめる時。アニーはワクワクする。忙しい隙間を縫って、メニューを見る。そして知る事実。


「紅茶が……ない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ