猿皮の小兵衛が好きです
猿皮の小兵衛って誰だよ? って思いましたよね?
っていうか、「ああ、あの爺さんね」って分かってしまった方!
たぶん、いないとは思いますが……。
もしいたらお友達になってくださいっっ!! 鬼平愛をぶつけあいましょう!!
では、前回予告したとおりマニアック路線でいこうと思います。どうぞ、ついてきてください。
最強の爺さん、猿皮の小兵衛が登場するのは、ずばり! 【はさみ撃ち】!
テレビシリーズ6stの第6話です! これ超好き!
博多の大盗賊、猿皮の小兵衛。
九州一体を荒らし回った彼は、ついに誰も殺さず、傷つけず、そして一度もお縄にかかることなく盗人稼業を引退する。
そんな彼が終の棲家と決めた場所は、鬼平の本拠地、江戸――。
孫だろ!? ってつっこみたくなるくらいの超若い奥さんをゲットした彼は、手下の弥次郎と薬種問屋の萬年屋を営み、隠居生活を満喫中。
すっごいヨボヨボのおじいちゃんなんですよ、小兵衛って。
しかもちっちゃくて、背中とかめっちゃ丸まってるんです。首ないじゃん、みたいな。
とても大盗賊だった人には見えないんです。
最初見たとき、「え? 盗賊だった人ってどれ? え? これ!?」って思いましたもん。
そんなおじいちゃん……じゃなかった、猿皮の小兵衛の趣味は貸本屋から春画を借りて読むこと。
すてきな趣味ですね。いい老後です。
だがしか~し! 貸本屋の若旦那に、若奥さんを絶賛寝取られ中なんです。
それをね、おじいちゃんは隙間からじっと見てるんです……。
猿皮の小兵衛には全てがお見通しなんですよ……たまんないでしょ? お見通しだけど、寝取られてるんです。
だがしか~し! 実はその若旦那、ただの色男じゃなかったんです!
正体は引き込みで有名な盗人、牝誑の友蔵だったのです。(※女ったらしみたいな意味です)
引き込みっていうのは、要はスパイみたいなものです。
盗みに入る予定の屋敷の人間と顔なじみになって、屋敷の間取りを調べたり、盗みに入る直前に、内側から鍵を開けて、盗人仲間を屋敷に引き込む役割を担います。だから引き込み、もしくは引っ込みと呼ばれます。
ちなみにおまささんも相当なレベルの引き込みです。
友蔵は、若奥さんを手練手管で籠絡し、毎晩楽しむだけ楽しんだあとは屋敷をのんびりと物色。着々と萬年屋の見取り図を仕上げていきます。
盗みが成功したそのあとは、萬年屋の住人をすべて皆殺しにするつもりです。もちろん奥さんもです。
でもね。ばっちりバレてるんです。猿皮の小兵衛にはバレバレ。
引き込み男にずぶずぶとハマっていく奥さんを、笑いながら放置プレイなんです。たまりません。おじいちゃん、すげえ。カッコいい。弟子にしてください。
「泥棒の家に泥棒が入った!」と、笑いをこらえながら弥次郎に話す姿は、新しいおもちゃを見つけて喜ぶ子供そのもの。かわいいおじいちゃんです。
「盗みに入られて、もし殺されたらどうしましょうか」と手下の弥次郎は弱気です。
でも猿皮の小兵衛は、もういつお迎えが来ても構わない歳だからと、ひょうひょうとしたもんです。
「昔は楽しかった。今は退屈だ……」
大盗賊全盛期の思い出に浸りながら、なんとなく哀愁漂うふたりのおじいちゃんたち。
なんとなく物悲しい雰囲気になっていきます。
嗚呼、じいちゃんたちの運命やいかに!?
一方の鬼平メンバーたちは、とある盗人が盗みの計画をたてている情報を得ます。実はその盗人のリーダーが牝誑の友蔵なのです。
しかも友蔵たちがしようとしているのは俗にいう「畜生働き」。
立派な盗人というのは、盗みの三か条を守ったおつとめをします。
一、貧しいものから盗まない。
二、人を殺さない。傷つけない。
三、女性をてごめにしない。
この三か条に背くおつとめは畜生働きと呼ばれ、盗賊仲間からも嫌われます。
友蔵は慎重そのもので、ギリギリまでどこに盗みに入るかしっぽを出しませんし、リーダーである自分の正体もずっと隠し続けます。
鬼平たちは盗人の仲間として、友蔵たちの助っ人になります。つまりは潜入捜査です。
盗人と鬼平たちが萬年屋の前にたどり着くと――。
けちょんけちょんにされた友蔵が、転がりながら屋敷から飛び出してくるではありませんか。
もちろん、やっつけたのは、ザ・じいちゃんズです!
さすがは元大盗賊。ちゃんと強かった。撃退シーンは痛快です。つい応援してしまいます。
「いけ! じいちゃん! いいぞ! もっとやれ!」
きっとあなたもそう思うはず。
ザ・じいちゃんズの活躍が知りたい方は、テレビシリーズ6st第6話! 【はさみ撃ち】ですよ! ぜひご覧ください!
なんだかよくはわからないが、今がチャンスと、鬼平たちは正体を現し、盗人たちをとっ捕まえます。
鬼平が見つめる中、何事もなかったかのように、スーッと静かに閉まっていく萬年堂の扉……。
被害は未然に防がれたのでした。
ここでめでたしって思います?
いやいやここからです。被害にあった萬年屋にも、詮議がありますから。
つまりここからが本命なんですよ、奥さん!
鬼平VS猿皮の小兵衛ですよ!
もうね、初めてあのシーン見たときは、アドレナリンが出まくっちゃいましたよ。
なんて例えたらいいんだろう。
剣道八段同士の試合で、どちらも一歩も動かずに一足一刀の間合いから、剣先だけの接戦を繰り広げているのを延々見せられたときと同じくらいの緊迫感とでもいうんでしょうか……。
やべえ! 一瞬もまばたきできねえ! 胃が収縮して吐きそうだぜ! なんてプレッシャーなんだ!!
……という感じでしょうか。(謎)
退屈だとぼやいていた猿皮の小兵衛は、鬼平とやりあったあとは、ご機嫌で自分の家に帰って行きました。
きっとおじいちゃんは、楽しかったんだと思います。
昔はたくさん悪いことをしてた人なんですけどね。妙に憎めない、かわいいおじいちゃんなんです。
あー、めっちゃ弟子入りしたい。
子供のようにはしゃいで帰って行く後ろ姿を見ていると、このまま捕まらずに、畳の上で大往生してくれよ! って応援したくなってしまいます。
鬼平犯科帳には、悪人なんだけれどもどこか人間くさくて、好きになってしまうような登場人物が多いのも魅力です。
この話が収録されているDVDにはもう一話、【墨斗の孫八】という盗賊のお頭の話も入ってるんですけど、そのお頭もすごくいい盗賊なんですよね……。
お気に入りの盗人を見つけてみるのも、この作品の醍醐味だと思います。
あなたのおすすめ盗賊、ぜひ教えて下さい。
さて、次回は女賊を紹介しようと思います。