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6 天使再び

 主人公、とは?


 「その世界の最重要人物」って言ってたけど、俺がそうだって事?


 俺が住んでいた地球。

 あの地球上で、俺が最重要人物だって事なんか?


 まったく実感がない。

 最重要どころか、変な女子に囲まれてヘトヘトになってるだけの哀れな高校生でしかない。

 そういえば、ラブコメの主人公って言ってたな。


 どういう事なんだよ。


 あの自称天使の二人は『統べる者』の使いだって言ってた。

 おぼろげに想像するしか出来ないけど、たぶんそれが神様みたいな存在で、色んな世界にいる“主人公”を管理してるって事なんだろうか?

 で、そのファイル名、みたいな感じで俺は「ラブコメの主人公」って称されてるのかもしれない。

 

 世界がごっちゃになった、か。


 九条アカリがあんな事になったのも【エラー】とやらのせいに違いない。

 彼女が化け物になる理屈は分からないけど、きっとそうなんだろう。


 何にせよ、寝て起きれば、元の世界に帰れるんだ。

 もう気にしなくていいか。


 明日には、何もかも元通りになって――。


 そのまま俺は、深い眠りに落ちていった。



 翌朝。

 起きるとドアの隙間から小さい紙が入れられている事に気付き、拾ってみると、


<ロビーに集合して下さい>


 と書いてあった。

 制服に着替えてロビーへ行くと、アレン、シーナ、タロの三人がいて、さらに、


「おお、ユウトさん、おはようございます」


 と、挨拶してきたのは天使のおじさん、それとバスガイド風の女性もいた。

 なるほど、メモの紙を入れたのは、この二人のどちらかだな。


「その、あの、実は、あの……」


 と、おじさんはもごもごしている。


「何だ? 言いたい事があるならはっきり喋れ」


 イラついたようにシーナが促した。

 それでもおじさんは、


「えーとその……あのですね……」


 とか言ってもじもじしている。

 見かねたバスガイド風の女性が旗を、ぴっ、と振り下ろし、


「私が説明します」


 と言った。


「単刀直入に言います。今回の【エラー】、我々では直せませんでした」


 おじさんは隣で、ああ言っちゃった、みたいな顔をした。


「どういう事だ?」


 シーナがにらみつける。


「はい、世界混在の【エラー】は通常、世界と世界の境目となる境界を切断する作業を行うのですが、今いるこの世界には、境界がありませんでした」


「え、待って、元に戻れないって事?」


 俺は焦って訊いた。


「いえ、そうではありません」


 バスガイド風の女性は冷静だ。


「まず、みなさまの世界にはそれぞれ【ラスボス】が存在します。その【ラスボス】がこの度の【エラー】により、全て合体してしまいました。【ラスボス】は、世の理を乱すもの。すなわち、【ラスボス】が合体する事で【エラー】が重症化し、世界の混在が強まったのだと思われます」


「【ラスボス】が合体――?」


 俺は思わず三人の顔を見てしまう。

 みんな、特に驚いていないようだった。

 というよりは、自分のすべき事を見極めようとしている感じに見えた。

 

「その【ラスボス】を倒せば、世界は元に戻ると思われます」


 女性が言うと、アレンが嬉しそうにテンションを上げた。


「誰がその【ラスボス】を倒すんですか!?」


「我々に殺生する能力はありません。この世界で【ラスボス】を倒せる可能性があるのは……」


 言わずもがな、だろう。


「任せて下さい!!」


 と、アレンは目を輝かせた。


「他のみなさんは?」

 

 訊かれてタロは、


「やってやろうじゃねーか!」


 と張り切り、シーナは、


「それで帰れるなら」


 と冷めた調子で言った。


 いや待って。

 俺は?

 俺、戦えないけど?


「あの――」


 俺が言い掛けると、

 

「ありがとうございますっ!!!」


 と、おじさんがお辞儀をした。

 シーナが言った。


「じゃあ、その【ラスボス】とやらのとこまで運んでくれ。最初にあたしたちをあの木の根元に集めたのはお前らだろう? 自在に人を運べるんだよな?」


「ええ、ええ! もちろんでございます!」


 待って待って。

 え? 今から行くの? その【ラスボス】のとこに?

 俺はおじさんに言った。


「あの、ちょっと待ってもらっていいすか」


「それでは少々お時間下さい、ただちに転送します」


 と言っておじさんはタブレットを操作し始める。


「いや、あの、俺、ラブコメの……」


 問題が解決する喜びに夢中になってるからか、全然聞いてくれない。

 俺が喋ってるのをかき消すようにアレンが


「楽しみだなー!!!」


 と、でかい声で叫んだ。

 やばい、このままじゃ俺、【ラスボス】のとこまで連れてかれるじゃん!

 いやだ!!!

 って俺も叫ぼうとしたら、


「あ」


 と、おじさんが言った。


「ん?」


 バスガイド風の女性がタブレットを覗き込む。


「だめです」


「「「「「は?」」」」」

 

「これあの、世界の境目がなくなったからだと思うんですけど」


 そう言っておじさんはタブレットから顔を上げた。


「転送できなくなってます」



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