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誤解した彼女

僕は朝から勃発した姉と姫寺の喧嘩を仲裁に入れず、登校した。

廊下に出て雑談に興じていた二人の女子生徒をはじめ僕が近くを歩いた生徒たちが口許を片手で覆い隠し、コソコソと噂話をはじめる。

「豊口らしいって」

「そうなん!羽井浪さんという恋人がいながら。そんな……酷ぅー」

非難めいた視線の女子二人からそそくさと離れ、教室に急ぐ僕。

普段では話題にも上がらない空気のような僕に軽蔑を感じる視線が集まる。

「豊口くん……おはよう」

教室に脚を踏み入れると既に登校してきたクラスメイトの反応に、僕が登校してきたことに気付いた羽井浪が歩み寄ってきて、不機嫌さを含ませた低い声で挨拶をした。

「おはよう、羽井浪さん……僕って、気に障るようなこと、したかな?」

僕は挨拶を返し、恐る恐る疑問を訊いた。

「豊口くん……私ははっきりさせたいです。そのぅ……私以外に好きな人は居ないですよね?」

「えっ?羽井浪さん以外に好きな人は居ません。信じてください!」

「はふぇっ!?そ、そそぅっ……そ、そうですか。昨夜、二人の綺麗な女性に挟まれてたって……」

「ファミレスでの一件……だよね?姉と姉の友人だから、浮気じゃないですよっ!信じて、羽井浪さんっ!」

「お姉さんとそのお友達でしたか……一安心しました。豊口くんにお姉さんがいらしたんですね。びっくりです。相当なお綺麗さと耳にしたので、一度お会いしたいです私!」

彼女が胸を撫でおろし、安堵する。

微笑んで、小首を傾け、機嫌を治した彼女に僕も安堵した。

「そうなんです。タイミングが合ったら羽井浪さんに姉を紹介しますよ。会ったら、号泣して喜ぶと思います」

「そうなれば、嬉しいですけど……不安です。豊口くんを疑ってしまい、申し訳ありません!」

ぺこっと頭を下げ、律儀に謝る羽井浪だった。

彼女のさらさらとした黒髪が垂れる。

「いやいや、そんな丁寧に謝んなくて大丈夫だからっ!頭上げて、気にすることないから!」

「ありがと。お姉さんがいらしたこと、話してくれてもよかったんじゃないですか?」

「話したら会うことになりそうで……姉に逢わせるのは気が引けて。面倒な性格なもんで……」

後頭部を掻き、申し訳なく返答する僕。


羽井浪が両腕を横に広げ、僕の背中に回して抱きついてきた。

「これで今夜は熟睡できます。豊口くんも」

身体に彼女の胸が押し当てられ、触れ合い、幾らか煽情的になる。

華奢な彼女の身体、背中に両腕を回し、優しく抱きしめた。

周囲の男子をはじめ、女子も羨ましそうに睨んでいた。

「キスがしたい。豊口くん、して」

「それは……後にしよ。そういうのは……後にしよう!僕が皆に殺されるから、これ以上は刺激するのは避けた方が……」

「えぇ〜!豊口くんに居なくなられたら大変!?わかった、今は引くよ」


目加治という女子生徒が隣の席に座ると同時に片肘で横腹を突いてきた。

「痛てぇっっ!?何するんですか?」

「死ねぇっ!豊口みたいなのが、羽井浪と交際してることにムカついてつい」

「理不尽なー……他人の幸せを祝福出来ないのはいただけないですよ」

「クッ……もう一発喰らわすぞ。なんであんたなんかに……」

「勘弁してぇ!骨が何本かヤるよ、次を喰らったら!?」

「冗談〜!羽井浪さんと拗らせるとお近づきも叶わなくなるからね」

「は、はぁ……」


一限目の授業を終えると、羽井浪が側に来て、物騒なことを漏らす。

「豊口くん、大丈夫?目加治さんに痛めつけられたとこ、診てもらわなくていいの?酷いよね、彼女……私の豊口くんを傷付けるなんて、豊口くんが味わった痛み以上を彼女に——」

「駄目駄目ぇー!いくら何でもそれはマズいって、羽井浪さん!?僕は平気だから」

「そ、そぅ……豊口くんがそういうなら、わかった」

この会話を聞いていたクラスメイトが目加治に告げ、昼休憩に目加治が、羽井浪に何度も頭を下げ謝ったのは言うまでもない。


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