姉の反応
「ただいまー……って姉貴っ!?」
テレビからバラエティー番組で芸人がコントをしているのが聴こえるリビングに足を踏み入れた僕は、キッチンのスペースで片手を腰に当て、冷蔵庫の前で牛乳パックを掴んで直飲みしていた姉に驚いた。
「おぅーおかえりぃ、ソウちゅん。ンだよっ、でけぇ声あげてよぅ〜?」
気怠そうな低い声で挨拶を返し、不機嫌そうに叫ばれたことについて訊いてきた姉だった。
姉は、微塵も悪びれる様子を見せなかった。
「『ンだよっ』、じゃないだろ!牛乳をじかにパックで飲むなよ、姉貴……」
呆れながら真っ当なことを言う僕に姉が睨め付けてきた。
「残り少なかったんだから良いじゃねーの!ソウちゅんは一々細けぇこと言うんじゃねー!」
姉が逆ギレして、右足の膝に蹴りを喰らわしてきた。
「痛ぁっ……ぅう。細けぇって……」
「ンなことよりさ、ソウちゅんが帰んのが遅いって珍し〜なぁー!どうした?不良にイビられたとか?」
姉が若干だが嬉しそうに笑顔を浮かべながら訊いてきた。
「弟が不良にイビられてるのを嬉しそうにすんなって!最悪だぞ、姉としてっ!?」
「冗談冗談。冗談だって〜ぇ、ソウちゅん。あははっ!イビられたら、アタシがソイツらをボコしてやるって。もしイビられてたらなっ!」
内側にウェーブした茶髪を揺らしながら笑ってから、真剣な顔で頼もしい言葉を発した姉。
「ふぇ?……え、ありがと」
姉が僕に当たらないように配慮しながら打ち出した拳をみつめ、間抜けな声で感謝の言葉を口にした。
「ママ遅くなるって。夕飯は外食で済ませてってさ」
「そう……」
「そうって……本気でイビられてる?今日のあんたの様子おかしい。悩んでることあんなら、聞いたげるよ……」
姉が僕の肩に両手を置いて、不安そうに揺する。
「違っ……そ、そうじゃ、うじゃなくって……イビられて、ないっ、からぁー、姉貴ぃー……」
「そ、そそ、そぉう?……外食だって言ってんでしょ、さっさと着替えて来なさいよっ!」
「えっ……?わ、わかったよ……!」
姉が唐突にキレて、僕の肩から手を離し、押してきた。
僕は、これ以上に姉がキレないように二階の自室へと駆け上がった。
僕は、姉と共に外食をするために外出したのだった。