緊張する恋人繋ぎ
会計を済ませ、スタバを後にし、羽井浪が寄りたいという食料品売り場に並んで歩を進める僕と彼女。
スタバを出た際に、震えた声で彼女から手を繋ぎたいと言われ、ぎこちなくではあるが手を繋ぎ合った。手が触れ合った刹那に二人して小さな悲鳴をあげながらも、である。
彼女から僕の五指に指を絡めて、恋人繋ぎをした。
彼女の手が、指が、僕の指に絡められている現状に緊張せずにはいられない。
手汗が……彼女の手を汚している。
「……っ。あっ……」
喉が潤ったはずだというのに、口内が乾いた感覚で言葉を紡げず、吐息が漏れるだけだった。
「あっ、ごめんね、豊口くん。私の用事に付き合わせちゃって。お母さんに夕飯のおかずを買ってきてって頼まれてて、ここで済ませときたくて……」
「付き合うくらい良いって。羽井浪さんと長く居れるんだから、むしろ付き合えてるのが嬉しいよ」
「ありがとう、豊口くん。そう言って貰えて嬉しい、私」
三本の人参を詰めた透明な袋を手に取り、彼女が微笑む。
「夕飯はカレーなの?羽井浪さん」
「うーん、どうかな。カレーかな?肉じゃがやポトフかも……今日は、お母さんだから分かんない」
首を傾げ、唸りながら予想をあげていく彼女。
彼女はジャガイモや糸こんにゃく、漬物やスナック菓子等を買い物カゴに放り込んでいく。
たわいない話題で会話を交わしながら、楽しむ僕と彼女。
レジで会計を済ませ、ところどころ黒ずむ青色のエコバッグを通学鞄から取り出して、買い物カゴに詰められた食品をエコバッグに詰め込んでいく彼女。
僕は彼女が詰めていくのを手伝い、詰め終えたエコバッグを提げて、ショッピングモールを後にして彼女と帰宅した。