泣いてくれる彼女
ショッピングモールのスタバに立ち寄って、注文した飲み物を置いたテーブルを挟み、談笑する僕と羽井浪。
「十分魅力的なのに......豊口くんを悪くいうのは、何というか──」
「羽井浪さんだけだよ、そういってくれる人は。救われてばかりだ......羽井浪さんには。生きる意味を見いだしてくれて、こんな僕のことを見つけ出してくれて──ありがとう。本当に、感謝しきれない程に」
「大袈裟だよ、そんな......救われたのは私の方なんだよ。豊口くんは私のそばでいつまでも居てくれるだけでいいんだよ。生きる意味なんてっ、そんなっ......生きていてくれるだけで──私のそばで居て、笑って、愛してくれる──だけでいいんだよ!豊口くんはっ」
泣きながら、肯定してくれる彼女の柔らかい声音に救われる。
涙を溜められなくなり、溢れ出した涙がぽたぽたとテーブルに落ち黒ずんでいく。
救われたのは......羽井浪、の方って?
僕はともかく、彼女が救われた、だなんておかしな話だ。同級生らからは羨望の眼差しで見られて、何不自由ない日常を送っているはずの彼女が、だ。
「......」
「取り乱して、ごめんね。困るよね、困惑するよね......私って面倒臭い、よね」
「そんなっ!面倒臭いなんてっ──」