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ささやかな幸せ

高校に無事進学できて、二ヶ月が過ぎたある日の昼休み。


僕は、教室を抜け、ある人と中庭のベンチで昼食を摂っていた。ある人とは、数日前から付き合い始めた羽井浪莉央で、誰にでも笑顔を振り撒き人当たりが良くて、クラスメートから人気の女子だ。

豊口蒼真がいくら努力したところで、彼女と釣り合うような男子になることはない。

教室では、空気のようにいない者のように話しかけられることも話題にあがることすらもないほどの冴えない男子だ。

そんな男子に、好意的な接し方をしてきたのが、隣に座っている彼女──羽井浪莉央だ。


「ねぇ、豊口くん。放課後にデートしてくれませんか?」

咥えていたスティックパンを噛みちぎり、デートのお誘いをしてきた彼女。

「えっ、いいの。羽井浪さん、デートって......」

「私では、不満だよね......こんな私なんか」

「不満ってわけじゃ。ただ、何ていうか......僕とデートして満足してもらえるかって、心配で。」

項垂れる彼女に慌てながら否定した。

「私は、豊口くんとデートしたいんです。それだけで満足しますよ、そそっ......()()

照れながら、最後に名前を呼び捨てにしてくれた。

勇気を振り絞ったことが伝わってきた。

「ありがとう。僕も、えっと......名前を、呼んでもいいかな?」

僕は、ひとさし指で小さく頬を掻きながら聞いた。

「う、うんっ!おね、がいっ......」

「うぅぅっとぉっ、りっ、りぃ......()()

「嬉しいぃっ、豊口くん」

彼女は、満面の笑みを見せてくれる。


やっと青春(はる)が巡ってきたのだと実感した僕だった。


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