旅のオトモ
窓のない石作りの部屋に通されてから10分ほど経っただろうか。外から声が聞こえてきた。
「お前たちは外せ。コイツは私が1人で聴取を行う。」
木製の厚い扉が開き先ほどの壮年の総隊長が部屋に入ってくる。
ドアをしっかりと閉めると同時に男がヨルの前にひざまづいた。
「お久しぶりでございます。王。先程の無礼な行い大変申し訳ございません。」
「良い。お前にも今の立場があるのだろう。それにしても姿の違う俺がよく分かったな。」
「何を仰いますか。王の"柄"は500年経った今でも心に焼き付いておりました。一目見た瞬間にあなた様だと気が付きました。」
オーゼンはかつての魔王部隊で部隊長を務めていた男である。武器術では魔王以外に並ぶ者がいなかった猛者である。
「遠くから戦闘は確認しておりました。あの男を追うのでしょう。」
「ああ、あの正体不明のモンスターもだが勇者を名乗るあの男は特に危険だ。これ以上の被害が出る前に早急に倒さなくてはならん。」
「この世界のために。」
「王ならばそう言われると思っておりました。本来ならば私もお供したいところですが、かつてほどの力は私にはございません。」
「しかし適任がございます。入りなさい。」
扉が開き中にあの外套が入ってきた。外套のフードを脱ぐと透き通るような長い白い髪が流れ落ちる。こちらを真っ直ぐに見つめる瞳はルビーのような輝きを放っていた。
「先程は早とちりをしてすまなかった………
今回、討伐に付き添うことになったシャルル=アルウィンだよろしく頼む。」
勇者の末裔は恥ずかしそうに頭を下げた。