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神出

周囲の林から隠れ見ていた住民たちが立ち上がり出てくる。


「ほ、ほんとに勝ちやがったよ兄ちゃんたち…」

「信じらんねぇ…たった2人だぞ!??」

「これで俺たちの仕事が……」


次の瞬間周囲より割れんばかりの歓声が起こった。


おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


「ありがとよ兄ちゃん達!!」

「俺らの救世主だッッ!!!!」


やっと勝利の実感が湧いたのかシャルルが膝から崩れ落ちる。


「勝ったのか…私たち……」

「ああ。思いの外苦戦したがな。」

「何が“任せておけ”だ。ボロボロじゃないか。」


シャルルが笑いながら痛いところを指摘する。


「二日酔いにしては上出来だ。それにしても最後の雷魔法の身体強化はすごかったぞ!見直した。」

「あれは奥の手中の奥の手だ。無理やり強化をするせいで筋肉を痛めて2、3日はまともに動けん。」


筋肉に痙攣が残っているのか小刻みに四肢が震えている。

立つのに失敗し姿勢を崩したシャルルへ手を差し出す。


「さあ、この場は住民たちに任せて俺たちは街に報酬をもらいに戻るとしよう。」


差し出した手をシャルルは力強く握り返し立ち上がる。


「ああ、酒場ツケも返さなきゃだしな。」



ボゴォォォォンッッッッ!!!!!!!!



シャルルの肩を支え帰ろうと振り返った瞬間、ドラゴンの腹部が突如として爆発した。パチパチと焼けて煙を吐き出す腹の穴から何かが這い出てくる。


「やっと静かになりやがった…俺を飲み込みやがってただじゃおかねぇ……ってああ??もうくたばってやがる。」


煙が晴れ顔があらわになる。その顔は忘れもしない。あの勇者だ、直後互いの視線が交錯する。



「全員ここからにげろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ヨルの叫び声と同時に勇者の軽機関銃の弾丸が撒き散らされる。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!


円を描くように発射された無数の弾丸はヨルの瞬時に展開した氷壁を一部貫通し住人達が悲鳴をあげる。


「ぐぁぁぁぁ!!!痛ぇ!痛ぇよぉ!!」

「腹に当たってる!!誰か医者呼んでこい!!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃッッッッ!!こいつ頭がッッ!!頭がッッ!!!」


中には重傷者や死者も多数見受けられる。


「明らかに前回より威力が上がっている!この短期間で弾丸に魔力を込める術を身につけたのかッ!!誤算だったッッ!!」


勇者はこちらに背を向けると坑道の中へと駆けてゆく。


「俺はあの勇者を追う!シャルル、お前は町民たちを安全な場所へ!!」

「お前も私を庇って被弾してるじゃないか!!治療だけでも!」


勇者の弾丸はヨルの前方の氷壁をも貫通し脇腹に1発、右太ももに1発ずつもらってしまっていた。


「回復魔法で治癒しつつ奴を追うッ!!アイツは危険すぎる!ここで必ず仕留めておかなくてはならない!!!」

「待てッッ!ヨルッッ!!!」


静止するシャルルの声を振り切り勇者の入っていった坑道の1つに突入する。


入口より10メートルほど進んだ地点で何か細い糸のようなものが足に触れる。


ボンッッッッッッッッ!!!


仕掛けられていた爆発物が爆ぜ、衝撃で天井の岩盤が崩れ道が塞がる。


「はぁ…はぁッッッッ……これで時間くらいは稼げるはずだ……」


ヨルの30メートルほど前を走る勇者は振り返り崩れ落ちた通路の方向を見る。


「とでも思ったか。」


ズズズッッッッ!


瓦礫が浮き上がり無傷のヨルが姿を表す。


「貴様はいつも変な道具を使うな。爆発物なら前回もう見たぞ。」

「てめぇはなんでいっつもいっつも無傷なんだよォォォォォォォォッッッッ!!!!」


再び勇者が軽機関銃を乱発する。しかし銃弾はヨルに命中することなく目の前で静止する。


「それもさっき見た。奇襲だから上手くいったものの2度目は無い。」

「クソがぁぁぁぁぁぁ!!!!」


勇者がデタラメに5発ほどの手榴弾を投げる。

爆発により再び広範囲にわたりトンネルが崩落する。

ヨルは重力魔法で瓦礫を掘り進みつつ勇者を追う。


しばらく掘り進めた地点で致命的な間違いに気がつく。

トンネルの向こう側より僅かではあるが風が吹き抜けていくのを感じる。


「(爆発物を多用した目的は時間稼ぎだけでは無い、こちらがこの風に気づかないようにするため。奴はこちらの歩調を遅めて坑道の反対側へ抜け逃げるつもりだ!!)」


直後、坑道のはるか先に出口の光が見えてきた。


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