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ドラゴン退治その4

「俺は左から攻める。お前は右から行け」

「速攻で片付けるぞ!」


ドラゴン目掛けて左右より別々に攻める。

右前脚の横なぎを姿勢を低く避けたところへ低い軌道の尻尾の薙ぎ払いが飛んでくる。

一撃を跳躍で避け、尻尾伝いに背中から頭部へと駆け上がる。

ヨルへとブレスを放つ頭部へ素早い斬撃を続けて2撃見舞う。


ギギィィィィィィンッッッッ!!!


「こ、こいつ予想以上に硬いぞッッッッ!!」


魔力を込めた剣撃が軽快な音とともに当然のように弾かれる。

さらに重い一撃を加えるべく態勢を作ったところへドラゴンの頭がこちらへ向き視界が炎に包まれる。


「しまった!!!」


ブレスが当たる寸前、目の前に氷のシールドが出現し回避の時間を稼ぐ。


「ヨル!!助かった!!」

「焦るなッ!巨大な相手は末端から攻めろッ!!」


ヨルは氷魔法で器用に安全地帯を確保しつつ前脚に的確な剣撃を加えている。

鱗にはだんだんとヒビが入ってきている。


「ここだ!!」


ズバッッッッ!!!


重い一撃音とともにドラゴンの左前脚が手首の部分から切断される。


ギャィィィィィィィッッッッ!!!


先程までの力強い咆哮に打って変わり悲痛な鳴き声が響き渡る。


「好機ッッッッ!!!!」


ドラゴンの懐へ入り込もうとするシャルルの前にヨルが飛び出て静止をかける。


「待て!!妙だ。」


よく見ればドラゴンは大きく空気を吸い込むようなタメの姿勢を取っている。

次の瞬間、轟音とともに周囲が灼熱に包まれる。

回転しつつ周囲に高威力のブレスを放ったようだ。

紙一重でヨルの発動した氷壁がギリギリ2人の安全地帯を確保している。


「おっ…おい!炎を相手に氷の壁で防ぎ切れるのか??」

「内側から新たな層を絶えず生成している!!こんな2流のブレスなんかに……うぷっっ…まずい……吐き気がっっ……」

「がっっ…がんばれ!!あと少しだ!!」


ヨルの吐き気が限界値を突破する一歩手前でブレスが止み、立ち込めた粉塵が前脚の爪で勢いよく引き裂かれる。


グォォォォォォォォォッッッッ!!!!


最初とは比べ物にならないほどの大きさの咆哮が響き渡る。

現れたドラゴンの身体を覆う鱗は先程までの漆黒から眩いばかりの白銀に変化している。


「あ…アイツッッ!姿が変わった!」


シャルルにさすられつつ昨日の肉料理の成れの果てを吐き出したヨルも驚きの表情を浮かべる。


「あの輝き、オリハルコンだ!取り込んだ鉱物成分で自身を強化で…」


ドゴッッッッ!!!!!


ヨルが言い終わる前に左前脚の一撃が氷壁を紙のように引き裂き2人を吹き飛ばす。

空中を舞いつつ同じく隣りを舞うヨルに声をかける。


「大丈夫か!!?ヨル??」

「昨日の酒がやっと少し抜けてきた、大丈夫だ。小規模の重力魔法でとっさに威力は殺した!」

「それより見たか??ヤツの脚が再生してる!!」

「おそらくあれは古代竜の成りかけだ!!再生核を潰すまで再生する!!ついに向こうも本気というわけだ。」


着地と同時に襲い来る右脚のなぎを剣で受け流し攻撃を仕掛けようと踏み込むが絶え間なく次々に攻撃が飛んでくる。

あまりに濃い攻撃の密度になんとか被弾を避けるだけで攻める余裕が無い。


「こいつ!鱗だけじゃなく速度まで強化されてる!!」

「一撃でも貰えば死ぬぞ!!気を引き締めろッッ!!」


再びドラゴンがブレスのタメの姿勢に入る。

炎を警戒して後退しようとしたところへドラゴンの口から大量の煙が吐き出され視界が真っ暗になる。


「こいつ!小賢しいッッ!!」


煙の中から襲いかかる前脚の乱撃を紙一重に勘で避ける。


「目だけに頼るな、もっと”柄”を見ろ!!」

「”柄”って何だ??一旦引くぞ!分が悪い!!」


後退するため体の向きを変えようとしたところに素早い尻尾の突きが襲いかかる。


「(しまった!!間に合わん!!)」


ドガッッッッッッ!!!!


尻尾の先端が頭部に掠め当たり、吹き飛ばされて地面を転がる。



「シャルル……!!無事かッッ??返事をしろ………」



遠くで声が聞こえる。視界が赤い、出血したようだ。焦点が定まらずボヤける。



「目をつぶれ!!“柄”を見ろッ!!魔力の流れが作り出す模様の柄を感じるんだッ!!」


どのみちこれでは視界は役に立たない。

目をつぶると暗くなり、頭にもらったせいか何も聞こえなくなった。     とても静かだ。

     自分以外のものが全て居なくなってしまったかのように感じる。

 遥かに広がる暗闇の先に巨大な靄が見える。うごめくとても大きな靄……

       靄の一部が伸びてこちらに向かってくる。

   姿勢を低くするように避け続けて向かってくる靄はわずかに身を引き避ける。

      避けながら靄に集中する内に徐々に輪郭が見え、靄の中にもわずかに柄が異なる場所があるのが分かってくる。

輪郭は伸びた靄に腕の形を与え、柄の違いは一つ一つの大きな鱗を形作る。

全体が見えドラゴンの形を意識できるようになって初めて自分が今ドラゴンと戦っていることを思い出した。


「はっっ!!!!!!」


目を開けると先程と変わらず視界は煙に遮られているがドラゴンの姿ははっきりと認識できる。


「“柄”の認識のコツを掴んだな!再生核は逆鱗の下だ!!斜め下から鱗の間をぶち抜けッッ!!」


ヨルの言葉にうなずき微弱な雷魔法を自身にかける。

これにより信号伝達と筋肉の動きを高速化し生物の域を超越した圧倒的な力と速度を得る。

大きな踏み込みとともに一直線にドラゴンへ突っ込む。

応じる右脚の一撃を命中前に脚力でぶっち切り、続けざまの左脚を剣で受け流す。

2撃から1テンポおいてブレスが襲いかかる。


ズバババババババッッッッッッッッッッ!!!!


超高速の斬撃による風圧でブレスを押し切る。

ブレスが切れた直後に右より尻尾の横なぎが襲う。


「(ブレスはオトリでこれが本命!このタイミングは避けられない…!!)」


命中の一歩手前で尻尾が何かに引っ張られるように動きを止める。


「そのまま決めろッッ!!!」


ヨルの叫び声が飛ぶ。


「おぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!」


鱗の向こう側、一際柄の濃い球体へ鱗の下から剣を突き上げるように滑り込ませる。


ゾンッッッッッッッッ!!!!!


立ち込めていた煙が一瞬にして消え、ドラゴンが動きをピタリと止まる。




ズズンッッッッ……………………………!!




ゆっくりと崩れ落ちるようにドラゴンが後方へ倒れ、動かなくなった。


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