ドラゴン退治その3
ガリバーは街の端にある鉱山から産出されるオリハルコン鉱石の取引で栄えてきた鉱山都市である。
その鉱山にドラゴンが現れたということは鉱石の産出が止まることを意味しており、町長が荒れるのも無理の無いことである。突然現れたとはいえドラゴンを今すぐに倒してくれるとあればそれは街にとっての希望の光そのものであり住民の期待は必然的に高まる。
鉱山を囲むように茂る林の中には無数の気配があり同じく気がついていたのかヨルも林を一瞥する。
「住民の気配が多いな。祭じゃないんだぞ。」
「きっと私がマクベスの小隊長であることも大きい。」
「あの町はそんなに有名なのか??」
「ああ、実力派冒険者の町で周りの魔物のレベルも群を抜いている。おかげで防衛部隊の実力は国の中でも随一との評判をもらっている。」
「若くしてそこの小隊長とは。お前も案外強かったんだなぁ。」
「嫌味か貴様っ!!」
その小隊長を圧倒したやつに言われたくはない。
鉱山入口は静まり返っており人っ子1人どころか目的のドラゴンすら見当たらない。
「ドラゴンがいないな。坑道を一つずつ虱潰しに探すか。」
「住処からして鉱物系主食のドラゴン、夜行性だ。この時間は寝ているのだろう。縄張りには敏感少しつつけばすぐにでも出てくる。」
ヨルの周りに無数の鋭い氷柱が出現し坑道へ狙いを定める。払う様な手の動きとともに氷柱が一斉に射出される。
シンッッ……………………
坑道から何も出てこない。
「出掛けにでも行ってるんじゃないのか?」
何かを感知したのかヨルが中央のいちばん大きな坑道へ視線を向ける。
「構えろ。出てくるぞ。」
ゴッッッッッッッッ!!!!
坑道の入り口が勢いよく崩れ砂埃が舞う。直後、引き裂く様に黒い巨大な尻尾が砂埃をなぎ払う。
現れたのは巨大な竜だ。全長30メートルはある。全身を黒い大きな鱗が重装兵のようにくまなく覆い、前と後ろの足の爪は研がれた刃物のように鋭く大きい。同じく鋭い牙の並ぶ口からは火花が溢れ出ている。
グォォォォォォォォォッッッッ!!!!!
空気はもちろんのこと大地も揺れ動いているのかと錯覚してしまうほどの巨大な咆哮。
私はこれからこいつを倒さなくてはならない。